過疎地で人材採用!? 画像 過疎地で人材採用!?

人材

 中小企業の人材確保は厳しさを増している。国内労働人口の減少、さらに近年では海外人件費の上昇や為替の変化によりオフショア開発に代表されるような海外労働力のメリットも失われつつある。

 今後、少子高齢化が進むにつれて日本各地で優秀な人材の取り合いがより一層激しくなっていくだろう。日本の人材採用は買い手市場。もはや企業が人を選ぶ立場ではなく、企業は人に選ばれる立場の時代になっている。この時代にどのようにすれば人から選ばれ、優秀な人材を確保できる企業になれるのだろうか。

 私もIT企業を経営していく中で優秀な技術者を確保できずに経営が行き詰まっていた時期があった。求人広告やヘッドハンティングなどの打つ手も当たらず、創業からの7年間で2名しか社員数が増えなかった。それを解決したのが人口7000人強の自然豊かな徳島県美波町に開発拠点となるサテライトオフィスを開設することだった。このサテライトオフィス開設を機に「半X半IT」というワークスタイルコンセプトを打ち出した。都会暮らしでは捨てざるを得ない個人にとって大切な「X」と仕事(当社の場合は「IT」)を日々両立していこうという考え方だ。

 太平洋と山に囲まれた美波町には海・山・川の自然の近くでしかできないアクティビティを日常的に楽しむことができる。緊密な社会コミュニティが残る集落ではお祭りや地域防災への参加など、社会の中での役目・役割を果たしながら生きることができる。サテライトオフィス開設後、サーフィン、狩猟、農業などそれぞれの「X」と仕事の両立を目指したいという若者が全国から集まり、社員数はサテライトオフィス開設後の3年間で3倍以上になった。

 振り返ってみると、地方でのサテライトオフィス開設が企業としての意志表示に繋がったのではないかと思う。この意志表示が何より重要だと後から気付いた。現在、若者の労働観・人生観は急激に変化している。「働きがい」「生きがい」「自分らしさ」を「金を稼ぐ」ことと同じように重視して、自分に相応しい生き方、場所、働き方、そして企業を選ぶ傾向が高まってきている。通信やクラウドサービスの発展がそんな行動を強力に支えている。

 そんな時代に選ばれる会社になる為には、この個人の「働きがい」や「生きがい」や「自分らしさ」の実現を、会社としてどう考えているかの意志表示しなければならない。

 人材採用に悩んでいる中小企業の経営者は考え抜くべきことである。そもそも企業として意志はあるのか、そしてそれを社会に対して表示することができているのかと。企業理念やウェブサイトで素晴らしい意志を語っている企業は無数にあるが、それをアクションして具現化している企業は少ないように思う。具現化することで初めて社会や人はそれに価値を見出し、選択肢にしてくれる。

 当社の場合は「半X半IT」が意志であり、自然豊かな過疎地に仕事の場を用意したことが意思表示になった。どのようにすれば選ばれるのかを意識しながら、企業の色、企業の想い、企業の在り方を社会に対してどう伝えていくかが人材採用の鍵になっていくだろう。

●吉田基晴(よしだもとはる)
サイファー・テック(株) 代表取締役社長/(株)あわえ 代表取締役社長
1971年美波町生まれ。神戸市外国語大学を卒業後、ジャストシステムなどを経て、サイファー・テック(株)を設立。2012年に美波町に「美波Lab」を開設。「半農半IT」など、人間らしい働き方の創造に挑戦する。2013年、(株)あわえを設立。

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《吉田基晴》

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