【リピーターを呼ぶお土産、強さの秘訣:3】下鴨茶寮の粉しょうゆ 画像 【リピーターを呼ぶお土産、強さの秘訣:3】下鴨茶寮の粉しょうゆ

インバウンド・地域活性

【記事のポイント】
▼伝統と革新。奇をてらわない
▼客の声、特にリピーターの意見を尊重する


 創業160年という京都の老舗料亭「下鴨茶寮」でまた一つ、この地を代表するお土産が生まれた。きっかけは、放送作家として知られる小山薫堂氏の一言から。この料亭の社長でもある同氏はある日、下鴨茶寮の料理長が出した牛フィレ肉の唐揚げを食べ、「おいしいけど、もうひと味加えたい。塩では物足りず、しょうゆのような旨味。でも、この食感は失いたくないね」と宿題を出した。その答えとして、料理長が考えたのが粉しょうゆだった。

 この一風変わった調味料は小山社長を満足させただけでなく、料亭の食事に添えられるようになると、利用客の間でも話題の一品となる。「これを土産として買って帰れないか」。そんな声に応えて商品化されると、発売からわずか1年あまりで15万袋を超える売り上げを見せた。

 では、この商品におけるヒットの理由とは何だろう。その理由の一つとして考えられるのが、下鴨茶寮の伝統が生んだ改革の精神、そしておもてなしの姿勢が生んだ顧客ニーズの受け入れだ。

■伝統と革新を意識する

 下鴨茶寮が代々受け継ぐ基本理念に、“伝統と革新”というテーマがある。小山社長からの宿題に応えるために一体何ができるのか。その先に料理長が行きついたのが、醤油をフリーズドライで粉末にするという発想だ。香川県の名門醤油舗「かめびし屋」の3年醸造醤油をベースに、一味とゆずも加えた。満足いく味を完成させるために、料理長はおよそ1年にわたる試行錯誤を繰り返した。

 それは、奇をてらって新しい味に挑戦しようと思ったわけでも、ましてやお土産の開発を狙ったわけでもない。老舗料亭が常に心掛けているポリシーが、昔からある調味料のしょうゆと、今の時代に即した技術を融合させた。それが、粉しょうゆ誕生のきっかけとなっている。

 そのこだわり抜いた味は、料亭を訪れた客によってクチコミやSNSで拡散されている。「粉しょうゆという調味料を初めて使った」、「液体じゃないから食感が損なわれない」、「出しゃばらず、後からじわっと来る感じが最高!」といったコメントが広まると、「粉しょうゆとはどんな味なのだろう?」と、京都を訪ねようとする観光客の興味を惹きつけた。

 当初、下鴨茶寮では粉しょうゆについて、そこまでのヒットは想定していなかったという。最初は京都限定、料亭と京都伊勢丹のショップのみで販売。これまでも「ちりめん山椒」、「きんぴらまぐろの佃煮」などのお土産や、デパートでの「料亭のお弁当」を順調に販売していたため、ショップ販売のノウハウは持っていた。だが、特に宣伝らしいこともしていない粉しょうゆに、ここまでの人気が出るとは誰も思わなかった。その売り上げはテレビや雑誌が取り上げるようになるにつれて、ますます伸びていく。

《板谷智/HANJO HANJO編集部》

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