教育現場のICT、その最新動向とは? 画像 教育現場のICT、その最新動向とは?

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 日本教育新聞社は3月19日に東京でICTをテーマに教員向け研修会「学校力・授業力向上講座&交流会」を開催した。次期学習指導要領では、より効果的な教育課程の実現を目指すために、育成すべき資質・能力を起点として授業改善を図るよう構造的な改革が打ち出されている。本研修会ではその最新動向を共有し、次期学習指導要領に先取り対応をねらった。ここではその様子を紹介する。

講演
アクティブ・ラーニングとICT活用
中川 一史 放送大学教授・博士(情報学)

 中教審の「教育課程企画特別部会の論点整理」では、「何ができるようになるのか」「何を学ぶか」「どのように学ぶのか」という観点から授業評価の充実を図ることを挙げている。なかでも「どのように学ぶのか」については、『アクティブ・ラーニングの視点からの不断の授業改善』と極めて強い表現が使われている。
 中川教授の講演では、このアクティブ・ラーニングが目指す、深い学びの過程、対話的な学びの過程、主体的な学びの過程という3つの実現に向けたICTの使い方が示唆された。
 まずICTは、思考を可視化するツールとしての特性を考えた使い方が大事になるとし、それには非ICTの特性を知ることも重要と指摘。「たとえばホワイトボードでも、書いたり消したり、多人数に見せることもできる。しかし、デジタルと違って保存や比較、拡大や転送はできない。こうしたメリットとデメリットをよく知った上で活用していく必要がある」と話した。
 一方、授業づくりにおいては教科・領域の特性を理解してICTを活用することが不可欠とした上で、3つの学びの実現とICTの選択と組み合わせを考えた場合、キーワードとなるのが「何かをしやすい」ことであると言及。たとえば電子黒板上の挿絵に書き込んで伝わりやすくする「書き込みやすさ」。タブレットで実験の映像をその場で撮れる「撮りやすさ」や、グループ学習での「見せやすさ」などがあると紹介。但し、「それには機能的な使いやすさだけでなく、誰に、何を、何のために、どうやってということが授業の文脈の中に入っていなければならない」と強調した。
 さらにタブレットでいえば、グループで画面を動かしながらシミュレーションするといった従来はできなかった活動や、クラス全員の意見がすぐさま電子黒板で共有できる活動などは、これから求められる資質を伸ばす学習に効果的であると挙げた。
 その上で、こうした便利なツールを生かすも殺すのも教師の力量次第であると指摘。「特に若手教師の割合が多くなり、教師力を身に付けさせたくても十分に対応できない状況であること踏まえても、教師の評価のために学習記録データなどのICTを活用することも考えていく必要がある」と提案した。

講演
タブレットで捉える、子どもたちの学力
入川 深雪 大日本印刷ABセンター教育ICTソリューション推進室
福田 晴一 東京都杉並区立天沼小学校校長

タブレットで捉える、子どもたちの学力
 2020年の入試改革を控え、子どもの学力を問うテストの内容や形も変化していくことが考えられる。ここでは、日々の小テストをタブレット端末で行うことで、子ども1人ひとりの学習状況を把握できる大日本印刷の学校向けデジタルテストシステム「Answer Box Creator」(以下ABC)が紹介された。
 ABCの長所について入川氏は、テスト結果がデジタル採点されてデータ集計されるため、従来の紙での採点に比べて教師の点数入力・集計作業などの負担が軽減できること第一に挙げた。
 加えて、解答した過程をすべてデータで保存する仕組みになっているため、たとえば算数ではどのように筆算したか、図形の補助線を描いたかどうかといった手順。さらに、それに伴う解答に要した時間も記録できると説明。「つまり、従来は机間指導や肌感でしか得られなかった子どもの努力の過程や悩み、つまずきなどが容易に把握できるようになり、データに基づく指導が可能になる」と提言した。
 その上で、同社との共同研究でABCを約半年間にわたって活用した杉並区立天沼小学校の福田晴一校長からは、デジタル採点が学校にもたらす具体的な成果が披露された。
 まず、自動採点が個別学習の効率化を実現し、教師の多忙を緩和させることをメリットに挙げ、クラス全体や個々の傾向を把握することが、授業力や個別指導の向上に結びついていくと指摘。「しかも、単純な正誤判定だけでなく、苦手な領域や解答時間、訂正回数。あるいはどういうプロセスで間違ったかなどを可視化できる多彩なデータ分析により、教師の授業改善にも役立てられる」と評価した。
 さらに、実践を続けるうちに「ぜひ、来年度は自作の教材で活用してみたいと意欲を示す教師が出てきている」と新しい可能性にも触れたほか、「これまで教師の勘や経験に頼らざるを得なかったことをデータ化することで、若手教員の教育支援にも活用していきたい」と抱負を語った。
 なお、同社では本実証などをベースに、児童生徒ごとに必要な指導を教師向けに表示する、復習が必要な教材を子どもに提示するなど、集計分析を指導に反映する機能拡充を図っていく意向だ。

講演
デジタル教科書を使った試行錯誤する学習の提案
宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校教諭

 光村図書発行の平成28年度版中学校国語デジタル教科書では、自在に本文を抜き出して加工する機能が追加される。この機能を使うことで、筆者の論理の展開を可視化して検討したり、試行錯誤したりしながら本文を要約する学習を展開する学習が可能になると宗我部教諭。ここでは、「君は『最後の晩餐』を知っているか」という評論文の教材をもとに、デジタル教科書を活用した対話的な読みを引き出す授業づくりを紹介した。
 「読む」という学習では筆者が書いたものごとをいかに理解するかであるため、その行為は非常に対話的なものになる。「たとえば“白い犬がいた”という一文だけでも、どのようにとらえるかで解釈は違ってくる。つまり、その意味はもとからテキストの中にあるのではなく、読み手の中に生成されると考える」とした上で、授業で発問を考えるときも、テキストやテキストの向こうにいる書き手と学習者とのインタラクティブなやりとりを引き出すことが大切とした。
 この授業では筆者が最後の晩餐の絵をどう評価しているかをテキストから抜き出してみることで、こうした対話を引き出す場面を用意。実際にスクリーンでキーワードを抜き出して見せ、「この機能を使えば、教師が板書でよく使う短冊で、用意していなかった子どもの考えに対応できるほか、並べ直したり引っ込めたりすることもできる。そんな試行錯誤によって子どもたちは考えを深めることができる」と活用例を示した。
 あるいは、接続詞だけを抜き出して、その前後の要点について考えてみることに活用。「『しかし』など、逆接の接続詞は後に来る部分に主張が表れてくる。こうした読み方のスキルを身につける授業にも効果がある」と話した。
 最後に、その場でテキストを抜き出せる意義について宗我部教諭は、「子どもたちの多様な考えに対応できる真の教材に成りえること。さらに、一瞬で抜き出せることで思考の中断が短時間で済み、子どもたちは考えることに集中できるようになる」とメリットを挙げるとともに、このような「先生が見せる」から「学習者が自ら操作する」機能を持つことが、デジタル教科書が発展していくべき方向ではないかと提案した。

講演
普通教室における電子黒板の一斉導入とその活用法
小橋 英治 パイオニアVC株式会社取締役教育営業部長

普通教室における電子黒板の一斉導入事例
 国際社会における存在感の低下や人口減少社会の到来など、日本が抱える課題のなかで人材育成及び教育改革の重要性が増すなか、政府や文部科学省は今一度日本を再生するために教育振興基本計画を閣議決定し推進している。
 そのターゲットとなるのが、「東京オリンピックが開催される2020年である」と小橋氏。なぜなら、大学入試改革の実行年度であり、次期学習指導要領が試行される年になるからで、「教育の情報化」がすべてここに結びついているとすると、すでに整備計画は待ったなしの時期に来ているからだ。
 この大学入試改革では、今までの知識偏重型の教育から、自分の考えを創発し発信していく能力が問われることになる。したがって、それまでに基礎的な能力を身につけていく環境を整備する必要があり、「教育の情報化」はこの大改革の基礎となる重要なポイントになる。
 それゆえ政府も、「教育のIT化に向けた環境整備4ヵ年計画」で学校のICT環境整備の中間目標(2017年)を設定して前倒しを図っているが、「教室の情報化」の核となる普通教室における1学級1台・電子黒板の整備を見ても、「未だ整備の遅れや地域格差が生じている」と現状を訴えた。
 一方、自治体の首長が率先して「教育の情報化」を推進するケースも生まれており、佐賀県では地方交付税とは別に、県主導で教育整備計画の大網を掲げて普通教室における電子黒板の整備を達成し、現在は、ICTを活用した実践研究の場を設け、利活用を研究する段階に入っていることに触れ、「それでも、2020年の教育改革を踏まえると特別に早いわけではなく、国の予定通り」と述べた。
 その上で、パイオニアVCでは、このような環境整備を支援するべく、電子黒板やタブレットを効果的に「普段使い」できる、教師も児童生徒も「簡単に使いこなせること」をコンセプトにした普通教室環境を提案。「今後は、一斉学習と協働学習に、個別学習が三位一体となった、普通教室のあるべき姿を支援していくプラットフォーム化を目指すほか、人口減少に社会に対応した遠隔授業への対応も追求していく」と抱負を述べた。

交流会
高い問題意識で白熱の話し合い

 すべての講座が終了した後には、参加者や協賛企業の情報交換を目的にした交流会が行われた。参加者はICTが生かせるアクティブ・ラーニング授業場面、協働学習、デジタル教材、タブレット端末環境導入・活用などのテーマに別れてグループをつくり、個々に抱える課題を紹介。それを共有しながら、どうすれば課題を解決できるのかそれぞれの立場から活発に議論した。小学校教諭は「他校の様子がよくわかり、いろいろ話せてよかった。今日得た情報をこれから生かしていきたい」と話し、教育委員会指導主事は「参加者の問題意識が高く、楽しく話ができた」と話していた。
日本教育新聞

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