取り分が数千万円変わることも!不動産の相続に潜む意外な落とし穴とは 画像 取り分が数千万円変わることも!不動産の相続に潜む意外な落とし穴とは

制度・ビジネスチャンス

 遺産相続のおよそ半分は、土地など不動産に関わる案件だと言われている。生前対策を含めて、”相続の成否”は不動産が握っているといっても言い過ぎではない。特に、現預金や換金が容易な金融商品に比べ、土地や建物は分けるのが難しい。親の死が家族のいさかいに発展したいわゆる「遺産争族」なども含め、実際の不動産売却事例を読み解きながら、もめない不動産の分け方を探ってみた。

小売業を営んでいた父の生前対策
 23区東部で小売業を営んでいた男性(80代)は、引退を決意し同居する子や孫のために所有する不動産を売却することにした。売却依頼を受けた不動産コンサルティング・仲介業のコア・リサーチ(東京都渋谷区、大竹桂一社長)が調査を進めると、隣接する自宅兼事務所の土地に難があった。将来土地を3分割して宅地として売ることになった場合、一区画あたりの広さが最低敷地面積を定めた規制に僅かに満たない。

 そこで同社は倉庫のある敷地側から10分を自宅兼事務所の敷地にプラスすることを提案。大竹社長は「残す自宅兼事務所の敷地の資産価値を守りながら、売却していくことが肝要であることを伝えた」と明かす。

 倉庫のある土地の高値購入者を戸建て業者とマンションデベロッパー100数十社から選別し、その買い手候補に現状から10程度を分筆しても買い取り価格が変わらないことを確認。その10を自宅兼事務所と共に残すことで将来の資産価値を担保しつつ、最高値をつけたマンションデベロッパーに2億円強で売却した。当時の路線価は1あたり30万円。他の買い手の平均提示額は1億7000—1億8000万円だった。

 土地を分割して売却する時は、安易に現況ラインで売るのではなく、売る土地と残す土地の資産価値を十分に検討してから分筆ラインを決めることが重要。中には最近になって法規制が加わったような土地もあるので注意が必要となる。ただ単に売るだけでは将来、土地の持つ資産価値を損なう可能性もありそうだ。

介護していた父の死去に伴う自宅の相続
 次は亡くなった親の遺産をめぐり、きょうだいが争った典型的な例。23区南部で親と同居し介護もしていたA氏(50代)は将来、自宅は当然自分のものになると考えていたが、親の死後に思わぬ形で「争族」に巻き込まれることになった。独立して家を出て行ったきょうだい(60代)のB氏が、遺産分割を主張。主な遺産は自宅の土地だったため、売却を余儀なくされたからだ。

 ところが互いに弁護士を立てた争いの中で、問題の不動産を誰がどのように売るのかに関しても意見がまとまらなかった。親と同居していたA氏から助言を求められたコア・リサーチは、不動産の売却条件を事前に決め、お互い期間内に最も高い買い付け証明を提出できる買い手をそれぞれ探し、裁判所で開札するよう助言した。裁判所もこの手続きを承認した。

 結果はA氏側の札が2億円台前半、B氏側の札=1億円台後半。約3,000万円以上の差でA氏側の札が上回った。コア・リサーチの大竹社長はこう解説する。「不動産を高値で売却するコンサルティングの手法を活かし、このような争いの場でも中立な立場をとりながら高値売却ができた」。結局、A氏は実家を手放すことになったものの、本人が納得できる価格で資産を売却し現金を手に入れることができた。

郊外に点在する土地の取り分をめぐるきょうだいの争い
 最後に父親の死去に伴って、埼玉県内に点在する畑および宅地をめぐってきょうだいが争った例を挙げる。実家で親と同居していたC氏と独立したD氏(ともに50代)で、C氏が家を出て行ったD氏を敵対視し、路線価の高い土地を取り分として主張した。遺産分割の対象となる土地は12カ所に点在。きょうだい双方が路線価の高い敷地を取ろうと「争族」が発生していた。

 土地をめぐっては、「事前の相続資産であるこれら土地を徹底的に調査したところ、戸建住宅地としての売却が最も適していることが判明。このエリアの購買層の住宅に出せる価格は概ね決まっており、路線価が多少高い土地であろうと販売価格が高くなる訳ではないということが分かった」(敵対視されていたD氏側から相談を受けたコア・リサーチの大竹社長)。

 そこで相続をまとめる戦略として、路線価が高い土地をC氏がほぼ取得することを了承する代わりに、面積的にはC氏よりD氏の方が多めに土地を分け与えてもらえるよう主張。

 その結果、低い路線価の土地を多く取得したD氏の手残りが数千万円単位で多くなった。路線価にこだわるあまり、実売価格を考慮しなかったC氏に対し、不動産の市場価格に着目して実をとったD氏。戦略の違いが両者の明暗を分けることとなった。

 都心部では相続対策として駐車場にしている場所や、かつて事業所や店舗として営業していたと見られる低層の建物などが目立つ。これらの土地は少なからず、所有者の死去などにより宅地やマンション用地として売り出されることになる。現に「都区部では単身世帯の増加(や夫婦二人世帯)の増加などにより、コンパクト系マンションのニーズが増えてくると見られる」(新興マンションデベロッパーの経営者)との声がある。

 事例で挙げたように、個人が相続した不動産を売却する場合には、意外な落とし穴が潜んでいることに注意が必要だ。

 
《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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