「日の丸パソコン」構想はなぜ頓挫したのか。破談の先にあるもの 画像 「日の丸パソコン」構想はなぜ頓挫したのか。破談の先にあるもの

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 東芝と富士通、VAIO(長野県安曇野市)が交渉を続けてきたパソコン事業の統合が、暗礁に乗り上げた。出資比率やリストラなどの条件が折り合わず、交渉は白紙に戻る見通しだ。最大の要因は、生産拠点の統廃合で妥結点が見いだせなかった点。今回の統合問題は東芝と富士通のパソコン事業の不振が発端だったが、両社が自社拠点の維持を譲らず、メリットを見いだしにくくなった。今後は振り出しに戻り、収益向上策を練り直すことになる。

 「日本産業パートナーズ(JIP)が交渉を降りた時点で、この話はなくなったも同然だ」―。関係者は明かす。統合交渉は不採算事業を切り離したい東芝と富士通が、VAIOとその親会社であるファンドのJIPを巻き込んで始まった。

その後3社で持ち株会社を作り、その株式の過半数をJIPが持つという所まで交渉は進んだ。しかし、拠点などは維持しつつも、連結対象から外すべく、できる限り出資比率を引き下げたい東芝・富士通と、一足先にソニーから分離し独自路線を歩み始めたVAIOの間で溝が埋まらなかったと見られる。

 合意時期としていた3月に入り、雲行きは怪しくなっていた。ある関係者は「3月中に決めたいが、条件がそろわず話が成立するか分からない」と吐露。これを裏付けるように、東芝の室町正志社長は事業方針説明会で「統合の方向性は一致しているが、条件面が集約できていない」と発言。目標合意時期を6月に後ろ倒した。

 当初から3社統合のメリットが見えにくいと指摘されてきた中、唯一の統合効果が生産や調達の集約による製造コストの削減だった。ただその点も交渉が難航。メリットは東芝と富士通がパソコン事業を連結対象から外す、という点のみになってしまい、破談に至ったとみられる。

 今後はそれぞれが独自で成長戦略を描かねばならない。VAIOはパソコンで尖(とが)った製品を展開。またロボットの受託生産事業など新規事業に力を入れ、パソコン偏重からの脱却を図っている。

 もくろみの崩れた東芝と富士通は、戦略の練り直しを迫られる。すでに両社ともパソコン事業は分社済み。採算性が見えやすくなった分、リストラに踏み込まねばならない可能性も出てくるだろう。他の売却先を模索する道もあるが、買い手は見つかりにくいという声もある。両社にとって険しい道のりになりそうだ
(文=政年佐貴恵)

記者ファシリテーターの見方
 当初から「成長戦略なき統合」と言われていた案件が、ついに破談の見込みとなった。そもそも各社の製品の方向性は異なっており、全て一旦壊した上で作り直すくらいのことをしなければ次の戦略は描けないという状況で、穏便な形での統合は無理があった。

 一定の規模はあり口は出したいが金は出したくない東芝・富士通と、規模は小さいが最も金を出すJIPという構図の中、強力なリーダーシップを取る役割がいなかったことも大きな要因だろう。東芝にとって構造改革の仕上げは、このPC事業の切り離しだった。室町社長は海外への売却も模索したが成立しなかったと明かしており、先行きは厳しい。今後の事業計画にも影響が出てきそうだ。
(政年佐貴恵)
《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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