【ゼネコンの危機管理・上】安全と生産性、精神衛生対策も急務 画像 【ゼネコンの危機管理・上】安全と生産性、精神衛生対策も急務

制度・ビジネスチャンス

 直接の雇用関係がない下請業者、作業員の統括管理も求められるゼネコンの建設生産システム。昨秋発覚した基礎杭工事のデータ流用問題は、そこに内在するさまざまなリスクを図らずも浮き彫りにした。重層構造の中で労働災害、社会保険未加入など結果責任を求められる課題が山積し、ゼネコンの危機管理のあり方があらためて問われている。リスクとどう向き合うべきか-。(編集部・岩本英司、溝口和幸)
 「最善の対策を実行していても事故は起きる。模範現場でも事故が起きれば不安全を理由に指名停止をはじめ厳しい措置が取られる」。ある準大手ゼネコンの担当者は、安全対策に心血を注いでいながら事故が起きてしまった現場の所長を念頭に、労災によってゼネコンが受ける損害の大きさをそう説明する。
 厚生労働省がまとめた労働災害発生状況(3月速報)によると、15年の建設業の労災による死傷者は前年比9・5%減の1万5331人と2年連続で減少した。ゼネコンの安全衛生対策が奏功しているとの見方もあるが、ある準大手ゼネコンの安全担当者は「15年は思ったほど工事量が多くなかったために件数が減った可能性がある」と指摘する。
 首都圏では2020年東京五輪の関連施設工事が本格化していく。「19年度までの完成を施主が求めている大型再開発やホテルなどもめじろ押し」(大手ゼネコン幹部)で、「工事量は18年がピーク」(同)とみられている。一方、現場で働く技能労働者の数は15年が前年比10万人減の331万人(総務省の労働力調査)と5年ぶりに減少。労務がさらにひっ迫する懸念が高まっている。
 技能者は高齢化が著しく、建設機械のオペレーターには70歳以上も珍しくない。「引退した作業員に戻ってもらったり、経験のない作業員が現場に入ったりしている。品質のトラブルや事故が懸念される」。大手ゼネコンの幹部はそう危機感を強めている。ゼネコンにとって労災は、工程の遅れや指名停止をはじめとする経営上の損失に直結するが、安全帯の不使用による墜落災害が後を絶たないように、元請の努力だけでは減らせない事故も多い。労務ひっ迫への対応に追われる中で、現場の安全確保と生産効率向上への次の一手が求められている。
 「精神衛生上の労災」への対応も求められるようになってきた。建設業労働災害防止協会(建災防)の要請で建設労務安全研究会が行った調査によると、回答したゼネコン・協力会社計374社のうち、メンタルヘルスの不調で1カ月以上休業または退職した従業員が30人以上いたゼネコンは6%、協力会社は4%に達した。対策を検討しているゼネコンは80%、協力会社は57%に上り、多くの建設会社が対策の必要性を認識している。
 精神衛生上の労災増加を受けて建災防は、現場の朝礼時に職長が作業員に口頭で複数の質問を行う「健康KY」や、現場の「無記名ストレスチェック」の実施をゼネコンに働き掛ける方向で準備に入った。
 労働契約法は、使用者に労働者の安全配慮義務を課しており、最近はこれを争点にした訴訟が増加。精神障害を発症した作業員が起こした訴訟では、元請・下請双方の同義務違反が認められ、企業側が数百万円を支払う和解が成立したケースもある。従来の身体的な労災と同レベルで精神衛生上の労災にも万全の対策が必要になっている。

ゼネコンの危機管理・上/安全と生産性どう両立/精神衛生対策も急務に

《日刊建設工業新聞》

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