所有者不明農地、増加する一方 画像 所有者不明農地、増加する一方

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 所有者が分からない農地が増え、農地の集積や固定資産税の徴収などに問題が出ている。国土交通省の推計では2050年までに、全農地の2%に当たる約10万ヘクタールが新たに所有者不明となる見通しだ。東京財団の調査でも、所有者不明のため固定資産税の徴収が難しいと回答した自治体は5割を占め、新たな対策が求められている。
 同省によると、所有者がすぐに判明しなかったり、判明しても連絡がつかなかったりする土地の面積は把握できていない。ただ地元に親族などがいない高齢の所有者が今後多く亡くなるなどの要因で、所有者不明の土地は増える見通し。推計では50年までに、森林でも総森林面積の1.9%に当たる約47万ヘクタールが新たに所有者不明となる。10~19年の期間では、農地、森林ともに総面積の約0.3%が新たに所有者不明になるとみている。

 愛媛県西予市の農業委員会では、再生可能な遊休農地の利用について意思確認の調査を進める。過去5年間で地主1000人に調査票を郵送したところ、半分の500人程度しか返信がなかった。宛先不明で返ってきたケースも多い。

 農家でない農地所有者の都会への転居が年々増え、数世代前に亡くなった人のまま登記が放置されているケースも多い。同委員会は、所有者が自分の農地の場所も把握できていないなど、農地への意識の希薄化が進んでいるとみる。

 同市が管内のJAひがしうわによると、農地を集落営農組織に集積しにくいといった課題が生じる。団地化しようとしても、所有者不明の農地には手が出せず、虫食い状になってしまうからだ。同委員会の担当者は「正直、自治体だけでの対応はお手上げ」と困惑する。

 所有者不明の土地を巡る問題は各地で深刻化する。東日本大震災の被災地では、高台移転の候補地の登記が明治時代のままで移転が難航した。また、西日本の自治体で公共事業の用地買収に携わる担当者は「関係する法律が複数にまたがる。個人情報の壁も大きく、煩雑な業務」と明かす。森林管理、災害復旧などでも問題に直面するという。

 東京財団が3月に公表した、自治体に対する所有者不明の土地に関するアンケートによると、土地の所有者が特定できないことで「固定資産税の徴収が難しくなった」と55%(486自治体)が回答した。相続人が未登記で死亡者に対して無効に課税する「死亡者課税」が今後増えるとした自治体は87%にも上った。

 同財団の吉原祥子研究員は「所有者を探すための費用負担や法の整理など新たな支援制度や土地制度が求められている」と指摘する。

 対策として国交省は農水省や法務省などと連携し、専門家会議を15年度に設置。3月に対策をまとめたガイドラインを公表した。所有者の探索方法を事業別、土地の状況別に紹介した他、解決事例や法律の解説などを記載。さらに16年度はモデル地域を選定し、対策に乗り出す自治体に対する支援も本格化させる方針だ。(尾原浩子)

50年まで10万ヘクタール増 担い手集積阻む 所有者不明農地で国交省が推計

《日本農業新聞「e農net」》

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