「やらまいか!」浜松の企業はマイナス金利をどう考えるのか? 画像 「やらまいか!」浜松の企業はマイナス金利をどう考えるのか?

制度・ビジネスチャンス

 日銀がマイナス金利政策を導入して2カ月が経過した。金融機関による貸出金利の引き下げなどで企業の設備投資や賃上げが促される効果を狙ったものだ。ただ石原伸晃経済再生担当相が「効果を見極めるには3カ月程度かかる」と指摘するように、現時点で明確な効果はうかがえない。マイナス金利は思惑通り投資の”呼び水“となるのか。自動車などモノづくり産業が集積する浜松市に焦点をあて、地域金融機関と企業のトップが考える投資促進策を聞いた。

浜松信用金庫理事長・御室(みむろ)健一郎氏
【低金利競争と一線画す】
 景気の先行き不透明感から企業の資金需要は伸び悩んでいる。浜松地域で順調に推移してきた太陽光発電関連投資も一服感がみられ、前向きな設備投資が大きく期待できない。新たな資金ニーズが少ないなか、低金利による金融機関間の競争が一層激化している。一部の地域金融機関では債務者区分が下位に分類され業況が芳しくない企業も明確な目標にしたり、当金庫が経営改善を後押しする取引先に対し金利面でより有利な条件を提示する動きもある。

 人口減少や生産拠点の海外移転によって経済規模が縮小する地方経済にとって、マイナス金利政策による貸出金利の低下圧力は一層強まることが予想される。

 こうした状況だからこそ、低金利競争から一線を画し、課題解決型営業を通じ取引先との関係を深め、地域経済に貢献する地域金融機関の使命をかみしめている。

 利下げだけでは、中小企業の投資は広がらない。政府には新産業を生み出す施策と、国際的にも円安が容認される環境整備を期待する。(談)

スペースクリエイション社長・青木邦章氏
【主要テーマは技術革新】
 自動車の開発段階で用いられる試験装置や計測器を開発する当社の事業は堅調だ。円安効果の点ではアベノミクスの恩恵を受けているのは事実。大手自動車メーカーの高業績はもとより、最大のライバル企業であるドイツ企業に対しては価格競争力が高まったからだ。だが政府に金融政策以外の過度の期待は抱いていない。

 エンジンやトランスミッションといった心臓部の開発は、国内投資が中心で需要は旺盛。部品の海外調達化が進んでも、品質評価のための試験機はデータ比較のため、国内製品を導入する傾向にあることから、今後も一定の設備投資が見込まれるだろう。ただ、マイナス金利が設備投資に拍車をかけるかは別問題。自動車の場合、省エネ、低燃費や電子化といった、めまぐるしい技術革新を追求することが主要テーマ。老朽化設備の更新や量産設備の導入に踏み切る類いの投資は限られてきているからだ。(談)

遠州信用金庫理事長・守田泰男氏
【地域資源を活用、次世代産業創出】
 静岡県西部地域しんきん経済研究所によると、静岡県西部地域の製造業の1―3月期の業況DIはマイナス18.8。2014年4月の消費増税後で前期比5%超の大幅悪化は初めてであり、厳しい景況感となっている。4―6月期予想ではマイナス幅がさらに拡大する見通しだ。主要産業である自動車に加え、機械の落ち込みが大きいことが危惧される。

 当地域は浜名湖を含め地域資源が豊富。来年の大河ドラマの放映やインバウンド宿泊客も急増していることから、従来のモノづくり産業だけでなく、観光をはじめとする地場関連産業に伸びしろがある。これが次世代産業として育成されれば、海外への生産拠点移転による経済規模縮小もカバーされる。

 マイナス金利政策導入以降、一部金融機関で預金金利を引き上げる動きがあり、当金庫も大河ドラマを地域にPRする期間限定商品として定期預金に若干の上乗せをしているが、業界全体に波及するものではない。新たな産業を興し、新規の設備投資につなげることが地域経済の持続的な成長につながると考え支援したい。(談)

<次ページ:成長戦略総仕上げ/「急がば回れ」内需の拡大を>

“苦肉の策”
 2%の物価上昇目標を掲げる日銀が、景気浮揚策として打ち出した“苦肉の策”であるマイナス金利政策。金融機関が日銀に預ける当座預金をマイナス金利とすれば、金融機関は同預金を企業融資に振り向ける効果を期待できる。だが株式市場による評価は一時的なものにとどまり、足元では地域金融機関の経営悪化や預金金利引き下げに伴う”タンス預金“の増額という”副作用“の方を懸念する声が少なくない。

 財務省がまとめた15年10―12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比8.5%増と11四半期連続で増加した。年度前半に慎重だった設備の更新需要がようやく出始めたことを反映するが、先行きは楽観できない。原油安と中国経済の減速懸念を背景とする年初来の国際金融市場の混乱を受け、企業の投資マインドが冷え込む懸念がある。

マイナス成長?
 日銀のマイナス金利が所期の狙い通りに機能し、大手企業を中心に持ち直しの動きを示している設備投資は今後も堅調に推移するのか。シンクタンクの間では「金利を下げても、実需がなければ設備投資は動かない」との見方が少なくない。

 主要シンクタンクは1―3月期の実質国内総生産(GDP)成長率を年率換算でゼロ%台と見通し、中にはマイナス成長との予測もある。このため日銀は4月または参院選に突入する7月に追加緩和に動き、マイナス金利幅を引き下げるとの観測も市場にくすぶる。

手詰まり感
 しかし、先の20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)では、マイナス金利を導入した日欧の金融政策に手詰まり感を否めないことから、先進国は財政出動による内需拡大策に期待感が示されている。

 利下げだけでは反応が鈍い設備投資をいかに促すか。政府は緊急経済対策を盛り込んだ16年度補正予算案編成の検討に入り、17年度の消費増税延期まで取り沙汰されている。ただ、これらの施策は対症療法に過ぎない。

 いかに実需を掘り起こし、地方創生につなげていくのか。安倍晋三首相が自ら「道半ば」と指摘する成長戦略を総仕上げすることにかかっている。「急がば回れ」である。
(文=神崎明子)

マイナス金利政策導入から2カ月。浜松発、地域金融機関トップの本音

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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