【大震災5年-これまでとこれから・20】新日鉄興和不動産・吉澤恵一氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・20】新日鉄興和不動産・吉澤恵一氏

インバウンド・地域活性

 ◇釜石市の復興街づくりに独自提案、全国地方都市に経験生かす
 東日本大震災の発生から1カ月後、全社横断組織の「釜石復興タスクフォース」を立ち上げた。新日鉄住金の事業拠点として長い歴史がある岩手県釜石市で、私自身も二十数年にわたってその社有地関係の仕事をしてきた。地域の人々とも長い付き合いがあり、釜石市の復興を手伝いたいとの思いがあった。市の復興計画に対し、われわれの街づくりに関する経験やノウハウを生かすことはできないかと考えた。
 タスクフォースの責任者として都市計画関係や商業施設関係などさまざまな部署のメンバーを集めた。従来に無い街づくりのアイデアもあったが、地域のニーズや行政の動向を見ながらさまざまな要素を絞り込み、新日鉄住金グループとして復興街づくりのビジョンを策定し、市に提案を始めた。
 市が急いでいたのは復興公営住宅の建設だ。市内は平地が少なく、建設用地の確保が難しいという事情があった。そこで新日鉄住金の社宅跡地にわれわれが復興公営住宅を建設し、市に買い取ってもらう「民設市買取型スキーム」を採用することにした。それが13年3月に第1期、15年2月に第2期が完成した「上中島復興公営住宅」に結実した。
 市街地の中心部にあった新日鉄住金の工場用地を復興拠点地区として活用することも市に提案した。結果的にイオンタウンが運営する大型店舗を誘致することになったが、われわれがこだわったのは店舗と街のつながりだ。既存市街地に人が流れ、にぎわいが生まれるように調整を進めた。防潮堤にスラグを活用するという提案も実際に反映された。それらの提案を通じ、街づくり、地域づくりの手伝いをすることができ、うれしく思っている。
 ただ、復興はまだ途上にある。われわれにできることはまだあるはずだ。
 復興公営住宅を整備した上中島エリアは、中心市街地としてのポテンシャルが高い。今後はここを中心とした小さな街づくりに取り組んでいきたいと思っている。周辺に子育て施設や高齢者施設、商業施設などを充実させることができれば、地域の発展やにぎわいの創出につながる。新日鉄住金の老朽化した社宅などの開発によるハード面の整備に加え、地域包括ケアシステムの構築をはじめとするソフト面の整備でも協力していきたい。
 復興タスクフォースで活動しながら、釜石市での取り組みは今後の事業展開に向けたモデルになるはずだと考えていた。いずれは地方都市のコンパクトシティー化などに生かしていきたい。
 まずは北九州市や兵庫県姫路市といった昔から新日鉄住金グループと関係が深い地域での事業展開を進めたい。住宅開発だけでなく商業施設などを配置して核を持つ街をつくることに取り組む。その次には、これまであまり進出していない地域に対し、釜石市で得た経験をどのように生かしていけるのか模索したい。新日鉄住金グループが多くの拠点を持つ九州エリアでは、周辺県を含めて事業展開できないかを検討している。
 上中島復興公営住宅では、工期短縮を目指し、新日鉄住金が保有する保有薄板軽量形鋼造(スチールハウス工法)や竹中工務店が開発した新工法(S造CFH工法)を採用した。全国的に建築費の高止まりが続いている。両工法ともに構造・施工上の条件や制約があるが、どのように活用・展開していけるか引き続き研究していく。(執行役員住宅事業本部副本部長)

大震災5年-これまでとこれから・20/新日鉄興和不動産・吉澤恵一氏

《日刊建設工業新聞》

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