【大震災5年-これまでとこれから・19】三井不動産・野末泰樹氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・19】三井不動産・野末泰樹氏

IT業務効率

 ◇既存も新築同等の防災性能確保、BCPの重要性高まる
 東日本大震災を経て、防災対策の重要性をあらためて確認した。テナント側も同様にBCP(事業継続計画)をより重視するようになった。働く場がないと日本の生産活動はストップしてしまう。そうした大事なものを提供しているという責務を感じながら、いかなる災害が発生しても一定の施設機能を提供し続ける。
 既存ビルのBCP対応を強化するため、12~16年度に約200億円を投じて約60棟の改修工事を進めている。エレベーターの耐震性能向上や自動診断仮復旧システムの導入、非常用発電機の稼働時間の増大(主要ビルで72時間)、非常用井戸の設置(トイレなど排水用)、集中豪雨時の浸水対策などに取り組み、進ちょく率は15年度末で98%程度に達する。サブリース系のビルでは先方の投資計画を踏まえて協議中のものもあるが、おおむね完了のめどがついた。
 改修工事は共用部分が大半だが、テナントには一部で不便や迷惑を掛けているところもある。それ以上にBCP対策への期待感が強く、テナント側も賛同、協力してくれている。
 既存ビルだけでなく、新築ビルでも東日本大震災を受けてBCPの基準を定め、各ビルのクラスに応じた耐震性能を持たせている。制震・免震装置の性能をより高め、従来は装置を導入していないクラスのビルなどにも導入するケースが増えてきた。帰宅困難者の受け入れスペースや備蓄倉庫の確保など、震災をまたいで設計や施設計画を見直した開発案件も少なくない。
 耐震性などBCP関連の施設性能が非常に高いビルが次々と建設されるため、古いビルの競争力が低下していく。新築と同等は難しくても、それに近いBCP性能を確保する必要がある。構造的に建物が持てばいいという問題ではなく、ある程度の揺れを抑える性能も確保しないとテナントの満足度は高まらない。
 超高層の新宿三井ビルは柔構造で建物自体が揺れながら地震の揺れを抑える。今回の震災の揺れでも建物として構造上の損傷は一切なく、安全な建物であることは確認できた。しかし、ビル内にいた人たちは長周期地震動によって長い間、ゆっくりとした大きな揺れを体感し、不安感が高まった。
 こうした不安を解消するため、新築ビルと同等の揺れ幅に抑えるためのプロジェクトに着手した。当初、制震ダンパーなどの既存技術の導入を検討してきたが、巨大なダンパーが施設利用者の目に入って余計に不安を増長させ、眺望が悪くなるほか、工事中のテナントへの影響も大きいと上層部から指摘され、再検討を余儀なくされた。
 抜本的に対策を練り直し、超大型制震装置(TMD)を鹿島と共同開発してビル屋上に設置した。既存ビルのBCP対策は新築に比べて難易度が高く、新宿三井ビルや霞が関ビルなどで行った対策の見学を希望する同業他社やビルオーナーも目立つ。
 ハードだけでなく、施設を使う側の訓練にもより実践的な形で取り組んでいる。簡単ではないが、自社で管理するビルでは基本的に非常時の帰宅困難者を受け入れていく。地元や関係機関はもちろん、テナントの協力が不可欠で、定期的に訓練しながら受け入れ側の意識を高めている。
 BCP訓練では意識が高いテナントばかりではない。試行錯誤しながら訓練に主体的に参加してもらえるようにテナント企業はもちろん、店舗利用者の啓発にも一段と力を入れる。
 (企画調査部企画調査グループ長、随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・19/三井不動産・野末泰樹氏

《日刊建設工業新聞》

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