【大震災5年-これまでとこれから・18】日本下水道事業団事業統括部長・井上茂治氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・18】日本下水道事業団事業統括部長・井上茂治氏

インバウンド・地域活性

 ◇非常、平常時問わず支援できる体制を、ハードとソフト組み合わせ提案
 日本下水道事業団(JS)は、東日本大震災直後の初動対応も含めて、これまで培ってきたノウハウを最大限生かしながら復旧・復興を支援してきた。
 復旧は被災した施設を元の状態に戻す事業。支援している24自治体の47施設のうち、16自治体の27施設の支援を完了した。数字の上ではまだ半分強だが、処理場だけ見ると、福島県の富岡町を除くすべての施設で15年度末に復旧が終了する。
 特に大きな区切りとして、今月末に仙台市の人口の7割の下水処理を担う南蒲生浄化センターが完成する。13年4月の築造開始から約3年で、処理能力が1日当たり40万トン規模の処理場を造るのは異例のスピード。これだけの短期間で完成できたのは、JSの力だけでなく、現地の建設業者や関係者と一致団結して取り組んできたからだ。
 復興では、津波被害で高台に移転した地域の新たな街づくりに合わせた下水道施設整備や、地震による地盤沈下で雨水を自然排水できなくなった地域でのポンプ場整備を行う。現在11自治体の33施設を支援しているが、街づくりの進展に合わせて事業を進めているため、まだ完了した施設はない。
 15年に日本下水道事業団法が改正され、JSの実施できるメニューが増えた。従来は処理場や幹線管渠、ポンプ場など根幹的施設の整備がJSの役割だったが、今回の改正で、管渠の整備も基本的に手掛けられるようになった。
 その一環で、福島県浪江町で管渠の面整備を支援している。福島第1原発事故の避難指示解除準備区域とされた権現堂地区は、17年度から住民が戻ってくるため、それに間に合うよう管渠の整備を完了させる予定だ。15年12月に着工した。居住制限区域の樋渡地区は、18年度に住民の帰還が始まるので、それまでに順次工事を進める。
 被災地での迅速な応急復旧では、法改正で災害支援協定もJSの支援メニューの一つとして新たに位置付けられた。事前に協定を結んでおけば、下水道管理者である自治体の承認を経ないでも応急的な対策が取れるようになった。法改正前より復旧作業が迅速化され、被害を最小限に抑えられる利点がある。しかし、非常時に現場に駆け付ければ、すぐ適切な対処ができるというわけではない。自治体と協力し、非常時だけではなく平常時も含めてきちっとバックアップできる体制を作っておくことが今後のテーマの一つになる。
 震災から得た教訓は、時間がかかっても対策を着実に継続的に進めなければいけないということ。東日本大震災では、特に津波で沿岸部の下水処理場が甚大な被害を受けたが、同じような被害が想定される場所は全国に多数ある。津波対策では耐津波の設計基準をしっかり定めた。
 復旧・復興事業では、次の災害をある程度見越して施設整備に取り組んでいるが、ハード面ですべて対応するのは限界がある。限界があることを常に念頭に置き、ソフトを含めて対処していくことが重要だ。ソフトとハードと組み合わせて自治体に提案していく。
 震災から5年は、ハード面では一つの区切りになるかもしれないが、被災し、避難していた方々が本来の生活を取り戻すところをゼロベースとすれば、まだゼロにすら戻っていない地域もある。この5年間の下水道を含めた復興事業への評価は、被災者とわれわれとでは違うかもしれない。そこを認識しながら、復旧・復興支援や今後の災害への対応に引き続き汗をかいていきたい。(随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・18/日本下水道事業団事業統括部長・井上茂治氏

《日刊建設工業新聞》

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