【大震災5年-これまでとこれから・16】水産庁漁港漁場整備部長・高吉晋吾氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・16】水産庁漁港漁場整備部長・高吉晋吾氏

インバウンド・地域活性

 ◇高度衛生管理など機能強化推進、地方創生モデルで産業再生も
 5年前、巨大津波が東北地方を中心に太平洋沿岸を襲った。地域の水産業は壊滅的な打撃を受け、漁港や養殖施設、背後の加工施設、人々が暮らす漁村全体に被害が及んだ。
 水産庁など関係機関は民間企業・団体と協力しながら、漁場や漁港に散乱したがれきの撤去、陸揚げ岸壁の機能回復に向けた復旧事業などを推進してきた。
 岩手、宮城、福島の被災3県で再開を希望する水産加工施設(816カ所)のうち86%が昨年末までに業務を再開している。漁港の背後にある加工場が動かないと、岸壁が復旧しても十分に水揚げができない。
 震災前より活気ある水産業にするため、販路開拓なども含めて官民挙げた継続的な支援が重要だ。24日に都内で開く「東日本大震災からの漁村の復興・創生シンポジウム」などを通じて被災地支援の機運を盛り上げる。
 これまで経験したことがない規模の復旧事業を発注することになった自治体では技術職員が絶対的に不足した。受注する業者側の人材不足や労務費の高騰なども顕在化し、入札不調が頻発した。
 人材不足への対応では、全国の自治体などが職員を派遣し、数量計算を簡略化した概算数量による発注や、複数工事の一体的な発注など、事務手続きの省力化・迅速化も進めた。一部の復旧事業にはコンストラクションマネジメント(CM)方式も導入し、発注者の支援に積極的に取り組んだ。
 施工者側への支援策では、国土交通省や関係業界と連携しながら技術者の確保、予定価格の適正化など、市場ニーズに柔軟に対応してきた。
 これまで打ち出した各種施策の効果が表れ、入札不調問題は落ち着いてきた。被災した漁港・漁村の復旧事業や支援制度の枠組みは十分整い、あとは各地の復旧・復興事業を早く完了させるだけだ。
 被災施設の再整備では、将来を見据えて地域の水産業を強くする観点が求められる。被災漁港の復旧と併せて高度衛生管理対策に力を入れており、HACCP(食品衛生管理の国際標準)の考え方を取り入れた閉鎖型の市場の整備が宮城県石巻市など拠点港を中心に進む。
 水産物の品質、衛生レベルをこれまで以上に厳しく管理することで付加価値を高める。被災地での水産物のブランド力強化に向けた取り組みは復興はもちろん、輸出による市場拡大などを見据えた地域創生のモデルとなる。品質・衛生面での働き手の意識が変わり、産業再生につながる。
 東日本大震災を経験し、津波に対する構造物の設計手法など基準類の見直しも進んだ。今後の大地震や大津波に備えるための全国防災・減災にも大きな影響を与えた。既存の漁港施設機能強化事業では機能診断調査の採択要件を震災後に緩和した。大津波の発生が予想される太平洋側を中心に診断件数が増えている。
 各地域で漁業に関わる官民の関係者を中心にBCP(事業継続計画)の策定も推進する。被災後はBCPに基づき、地域を支える水産業を早期に復旧・復興させる。建設関連団体と災害協定を締結する取り組みも今後の備えになる。
 防災・減災や国土強靱(きょうじん)化への社会の意識が一段と高まる中、17年度からの次期漁港長期計画には、インフラ整備に関する新たな目標値や指標を定めることも必要だろう。ハード・ソフト両面から災害に強く、漁業を素早く再開できる基盤づくりを進めることが一段と重要になる。
 (随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・16/水産庁漁港漁場整備部長・高吉晋吾氏

《日刊建設工業新聞》

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