【建設業「命」の現場で・25】第5章・希望をつくる、合言葉は「一皮むけろよ」 画像 【建設業「命」の現場で・25】第5章・希望をつくる、合言葉は「一皮むけろよ」

インバウンド・地域活性

 宮城県気仙沼市の丸本建設は昨年12月、市の提案を受け、災害時に避難所が開設されるまでの間、避難者を同社の施設で一時受け入れることを内容とした協定を結んだ。
 大勢の人が来ても雨風を避けられるような倉庫や、18トンの貯水タンクを設置。社宅を併設しているので、トイレは4カ所、浴室は2カ所ある。集落の高台移転の工事で発生している伐根材などを燃料に活用できる自家発電施設も整備した。震災後に設備を徐々に整え、一通りそろったタイミングで市民の要望から協定の話が持ち上がった。
 同社は、同市鹿折地区を見下ろす高台にある。あの日、社長の村上靖は、津波に襲われる故郷を立ちつくしながら見ていた。目の前の道は、指定避難場所である鹿折中学校に通じており、同社にも多くの人が集まった。だが、緊急用設備が無く、皆が寒さで震えるのを見ていることしかできなかった。「自分は何と無能なのか」。出発点は悔しさだった。「建設業は地域の防災業でもある。何かあった時に、役割を果たさなければ駄目だ」。
 「震災から5年過ぎて競争が厳しくなっているが、そうしたことばかり言っていると若手は育たない。育てながら仕事をしていくことも使命だと思う」。村上は今、そう感じている。
 芳賀進人と中島大地は、入社2年目と1年目の若手コンビ。同社の技術系社員は、施工管理から現場作業、ダンプ運転手、重機オペレーターまでこなす。二人とも今は仕事を覚えることで精いっぱいだが、「会社の中心人物になりたい」(芳賀)、「技術を盗んで先輩を抜きたい」(中島)と意欲を見せる。村上は、ベテラン社員を若手の教育係に充て、面倒を見させている。時には生活態度にまで口を挟むこともあるが、「怒られても、自分の成長のために吸収したい」と芳賀は言う。
 村上は「これからは『一つのことができればよい』とはならない。技術を身に付ければ年を取っても食べていける。どこに行っても通用するくらいの技術を身に付けてほしい」と話す。
 それは企業戦略とも密接に結び付いている。目指す道は「薄く広く」。同社は、建設業に加え、解体業や廃棄物処分業、運送業、廃棄物収集運搬業など複数の顔を持つ。残土のリサイクルや砕石販売にも手を広げようと準備中だ。新規の建設工事だけではなく、既存構造物の解体や廃棄物の運搬・リサイクルなども含めた一連の流れを社員が多能工として自由自在にこなせば、コストを抑えることができる。
 復興需要はいずれ終息し、事業量は激減するだろう。仕事がゼロになるわけではないが、小規模かつ多様なニーズへの対応力が求められる形に市場のあり方が変わるはず。その変化に対応できる企業へと自らを進化させる。「外注しなければ、単価が安くなっても何とかやっていける。建設業一本に依存するのはリスクが大きい」と村上は見る。
 「『この現場はあなたたち二人に任せる』って早く言いたいんだよ」。村上が、若手に呼び掛ける姿は親のようでもある。彼らに発している合言葉は、「一皮むけろよ」。それは、市場の激変期が近づきつつある東北の建設業全体に通じるキーワードなのかもしれない。=敬称略
 (ご意見・ご感想をメールでお寄せ下さい。東北支社・牧野洋久、mak@decn.co.jp)

建設業「命」の現場で・25/第5章・希望をつくる/合言葉は「一皮むけろよ」

《日刊建設工業新聞》

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