東北建協連と東北整備局、東日本大震災5年シンポ開く 画像 東北建協連と東北整備局、東日本大震災5年シンポ開く

インバウンド・地域活性

 ◇事前の備えが何より重要
 東北建設業協会連合会(東北建協連)と東北地方整備局は10日、「東日本大震災5年シンポジウム-建設技術者が果たした役割、そしてこれから」を仙台市青葉区の江陽グランドホテルで開いた。造園家の涌井史郎氏による講演と、震災後の初動や復旧・復興に奮闘した建設技術者らによるパネル討論を実施。未曽有の災害の後に建設業が果たした役割や5年間の軌跡を振り返るとともに、そこから得た課題や東北地域が歩むべき将来像などを考察した。
 東北建協連が「がんばろう!東北」として例年開いてきたイベントに今回、東北整備局らが加わった。
 冒頭、川瀧弘之東北整備局長は「東日本大震災発生から5年が経過し、復興事業は順調に進んでいる。きょうは復興に尽力した主役も多く集まっている。震災の記憶を風化させず共有財産として発信することで、東北のさらなる安全・安心につなげることが大切だ」と述べた。
 講演で涌井氏は、被災地で復興事業が進む中、県外などに避難した被災者が故郷に戻らず、東北の人口減少に拍車がかかっている点を問題視。国内全体でも2030年に大量のベビーブーマーが後期高齢者となるなど生産年齢人口が減り続ける中で、日本の経済力が長期的に衰退するとのシナリオを示した。
 経済振興への打開策として、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)など技術革新の有効性を強調した。面積が広い一方で人口減少が急進するなど不利な条件がそろう東北地方だが、技術革新を極めれば、それらの悪条件を克服できると主張した。
 国際リニアコライダー(ILC)の誘致やバイオ・ナノテクノロジーの研究開発などを突きつめることで東北の可能性が広がると指摘した。
 人口減少に対応する上での必須条件として都市の集約化を挙げ、東京や名古屋を一つの圏域とみなす国のスーパーメガリージョン構想に言及。地方都市と東京圏が観光交流などで連携する姿を理想として示した。
 防災・減災対策では、河川堤防に植樹する信玄堤や霞堤など日本が古来から培ってきた減災策を「日本独自のレジリエンスの知恵だ」と高く評価。工事監理や災害対応を得意とする建設業の役割を「地域のホームドクター、用心棒だ」と言い表し、地域の未来をつくる重要な業種としての役割に期待をかけた。
 □建設技術者の貢献と教訓□
 パネル討論では涌井氏のほか、上野裕矢氏(東北建協連・刈谷建設)、須川泰浩氏(日本埋立浚渫協会東北支部・五洋建設)、高橋林氏(日本建設業連合会〈日建連〉東北支部・清水建設)、向田昇氏(建設コンサルタンツ協会東北支部・大日本コンサルタント)、姥浦道生東北大大学院教授が登壇。
 発災直後に土木・建築技術者として道路や航路の啓開作業に従事した経験を基に、災害への備えや連携のあり方について意見を交わした。
 甚大な被害の中、道路や航路の啓開作業を行う上で、国などと事前に交わしていた災害協定が有効に機能した点を多くの登壇者が評価した。あらかじめ関係者の役割分担を明示しておいたことが、橋梁の緊急点検や道路のがれき撤去などを早期に終える結果につながったとして、災害には事前の備えが最も重要だと結論付けた。
 高橋氏は日建連が東北整備局だけでなく東北6県・仙台市などとも幅広く協定を結んでいたことが吉と出て、より迅速な初動が可能になったと指摘。災害協定の締結先を広げる必要性を語った。
 涌井氏は、関係機関の物資・機材の保有状況を把握したり広域連携の協定を交わしたりと、ソフト対策を拡充することが「防災・減災、縮災につながる」と説いた。
 上野氏は、発災後に労務・資材の調達が困難になり、工事の見積もり価格が上昇した事実を問題視し、「現行の予定価格制度は復旧の足かせになる。非常事態を想定した入札・契約制度をつくる必要がある」とした。
 涌井氏は、企業が災害に備えて普段から人や機材を保有し続けるのはコスト的に困難だとして、官民や地域の共同出資による中間的な組織を設け、資機材を備蓄しておくアイデアを提示した。
 向田氏は、復興事業で多くの構造物が作られたことにより、将来的に膨大な維持管理の需要が生じると指摘。維持管理を効率的に行うため、復興道路整備に活用された事業促進PPPのような民間のノウハウを活用する手法が浸透するとの予想を語った。
 参加者からは、建設業の担い手を確保する上で、業界が震災復興に果たした役割を広くアピールする重要性を説く声も多く上がった。

東北建協連、東北整備局/東日本大震災5年シンポ開く/技術者ら災害協定の有効性説く

《日刊建設工業新聞》

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