東京海上、「日本で一番人が育つ会社」へのレッスン 画像 東京海上、「日本で一番人が育つ会社」へのレッスン

人材

 「日本で一番人が育つ会社」を目指し、東京海上ホールディングス(HD)が動きだしている。現在の中期経営計画では「働き方の改革」など三つの改革を掲げ、改革を支える人材育成を主要な施策の軸に置く。4月には新しい人事制度も始まる。競争の舞台が海外へと広がる中、本格的なグローバル保険プレーヤーへ脱皮すべく、世界を見据えた人材育成にも余念はない。

 「働く従業員全員が成長を実感できるよう高みを目指していきたい。それなら日本で一番を目指す」。東京海上HDで人事を統括する大場肇常務執行役員は「日本一」に込めた思いをこう説明する。

 東京海上HDは2015年度から始まった中計で三つの改革を掲げる。顧客から「選ばれ方の改革」、従業員の生産性を高める「働き方の改革」、そして「変革し続けるよい社風」。三つの改革に共通するのは「人」だ。

++人と人が作り上げる信頼が商品そのもの
 保険は商品やサービスに形がない。それだけに人と人が作り上げる信頼が商品そのものであり、そして人材の成長は会社の成長を支える。日本で一番人が育つ会社になれば、それだけ競争力のある企業へと進化する。

 新中計が始まってまもなく1年。変革の成果は確実に起きている。「働き方の改革」では労働生産性の改善、ダイバーシティー(多様性)の二つを軸に改革に着手。生産性向上に向け顧客への価値提供を最優先し、業務見直しや個々人の能力向上を進める。

 「驚くほど、いいアイデアが集まってきた」。大場常務執行役員は全国の職場から集まる改善のアイデアに手応えを感じている。生産性改善のアイデアを集う「働き方の変革大賞」では、IT機器を利用した代理店営業の効率化などの多くのアイデアが続々と集まる。選ばれた取り組みは社内で広く共有され、企業としてさらなるレベルアップにつながる。

 ダイバーシティーも改革を支える軸の一つ。保険業界の特徴として女性が多いことから、女性従業員の意見をさまざまな階層の意思決定に反映できるよう取り組みが進む。

 女性リーダー層の育成にも熱を帯びる。女性従業員向けの研修を増やし、さらに1拠点の滞在期間を短縮化し、経験できる仕事を増やすことで成長を後押しする。

新人事制度はグローバルで戦うためのもの
 4月には10年ぶりの改定となる新人事制度が始まる。従来は勤務地を問わない「全国型」、限定となる「地域型」をそれぞれ、「グローバル」、「エリア」に変更。これまで職種によって差をつけていた昇格条件を同一化する。

 成長の機会を同じにして、同じ能力が発揮されれば、昇級スピードも等しくなる。大場常務執行役員は「人の成長を後押しできる制度にした」と話す。

 一連の人材育成は日本だけでなく、世界も視野に入れる。欧米の企業を買収し、今や東京海上HDは利益のほぼ半分を海外事業で占めるようになった。競争の舞台が広がる中、世界で通用する人材の重要性も増す。グローバル人材の育成も急ピッチで進む。


海外研修は必須
 「当社のグローバル戦略はいよいよ第二ステージに移行する」。東京海上ホールディングス(HD)の永野毅社長は4月以降のHDの新体制発表で、こう宣言した。

 同社は2008年の英キルンから始まり、米フィラデルフィア、米デルファイ、米HCCと欧米の保険会社を買収し、事業と地域の分散をいち早く進めてきた。

 経営トップから管理職まで国籍を超えた交流も活発化。海外事業の重要性が増す中で、入社3年目までの海外研修の必須化、海外リーダーシップトレーニングなど人材育成も世界を意識したプログラムが組まれている。今ではHD全体の利益の半分を海外事業が占め、グローバル企業に向けた一定の経営基盤を整えた。

 16年度からの第二ステージはこれまで蓄積した経営資源のストックを活用し、グループ経営により踏み込んだ段階へとかじを切る。

 リスク管理、IT、資産運用、そして人事。こうしたHDが保有する機能に応じて、グループに横串を刺す委員会を複数設置する。大場肇常務執行役員は「外国人の従業員の意見をさまざまな意思決定に反映させていきたい」とし、グローバルベースで最適な意思決定を進める体制に移行する。

 この体制で求められる人材も、これまで以上にレベルアップが要求される。一つはリーダー層の育成だ。グループ傘下に海外企業が増える中で、経営を担えるリーダーの重要性も増してきた。各国の経営的なポストに従業員を配置し、活躍できる人材を育てている。

タレント増やす
 特定の分野にたけた専門人材の輩出にも力を入れる。買収した海外企業では資産運用、保険引き受けをはじめ、特定の分野に強みを持つ専門人材が多い。日本ではゼネラリストが比較的多いとされてきたが、世界で通用するスペシャリストの育成も課題となる。

 国内ではMS&ADインシュアランスグループHD、損保ジャパン日本興亜HDの3メガ体制に集約された。しかし、世界を広く見れば仏アクサ、独アリアンツなどグローバル保険プレーヤーが立ちはだかる。

 競争の舞台がより世界へと広がる中で、世界に通じる人材の育成も急務となっている。永野社長は「経営のリーダーシップが発揮できるタレントを増やし、質も高めていきたい。人材のレベルが上がれば、次の買収ができる力も備わる」と展望を話す。世界で通用するタレントの育成が進んでいる。


人事を統括、大場肇常務執行役員に聞く
 ―「日本で一番人が育つ会社」というメッセージを掲げました。
 「保険は人の思いが商品を形作り、人の成長が会社を支える。当社はもともと、人を育てる文化は根付いているが、日本で一番かというとまだやるべきことがある。特定の従業員ではなく全従業員が成長する幅、この総和が日本一と言われる会社を目指したい」

 ―人材育成で重視することは。
 「成長する上で大事なことは『こうなりたい』という姿を描き、仕事をすること。『育つ側』の成長への思いに対し、『育てる側』の上司は部下に期待し、鍛え、活躍の場を与えていくよう求めていく。育て方もOJTに過度に依存せず、場面に応じて部下とどう対話したらいいかをまとめた実践本を作成し、上司必携にしている」

 ―4月に新しい人事制度が始まります。
 「従業員の成長を人事制度が後押しできるよう一体化を図るのが最大の狙い。評価も発揮されている能力を軸にする。例えば勤務地を問わない『グローバル』、限定する『エリア』を設けた。昇格条件はコースによって分けず、同じ能力が発揮されていれば同じように昇級していく」

 「『エリア』の中には一定のエリア内で勤務地を選択できる『ワイド』を設け、多くの経験を積めるようにする。もちろん、育児や介護で家族と一緒に住まねばならない状況も生じる。その時は通常の『エリア』を選択できる。仕事をする上で制約が生じないよう制度を運用していく」

 ―海外企業の買収でグローバル化が進んでいます。人材育成における課題とは。
 「日本人従業員、買収先のローカル従業員の両面で人材育成を進めていく。ただ、重要なのは企業理念を共有すること。同じ東京海上グループでも国や文化が違う中で人事制度をいきなり同じにはできないし、規制も国ごとに異なる。当社が掲げる『グッドカンパニー』、つまり『いい会社をつくろう』という思いを共有することにも力を入れていきたい」
(文=杉浦武士)

 

東京海上「日本で一番人が育つ会社」へのレッスン

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

編集部おすすめの記事

特集

人材 アクセスランキング

  1. 旅館業の人材不足をどう解決すればいいのか/第3回 働き続けられる環境を整備する

    旅館業の人材不足をどう解決すればいいのか/第3回 働き続けられる環境を整備する

  2. 旅館業の人材不足をどう解決すればいいのか?(第1回 状況編)

    旅館業の人材不足をどう解決すればいいのか?(第1回 状況編)

  3. 新人研修で農業体験! NPO活動から生まれた農業研修プログラム

    新人研修で農業体験! NPO活動から生まれた農業研修プログラム

  4. 国交省が4月から社保未加入の2次以下下請も排除、指導の猶予期間設定

  5. ゼネコン大手5社、下請け業者の社保加入促進に本腰

  6. 社歌に出会う旅 1~豊橋商工会議所「社歌ラップ・ワークショップ」~

  7. 中小企業は「ストレスチェック制度」にどう対応し、活用していくべきか?

  8. 安藤ハザマ、新入社員が技研で長期研修、施工管理の基礎取得

  9. みんなで話そう―看護の出前授業!

  10. 全国建設業協会/会員企業の8割が賃金引き上げ、女性の割合12.8%

アクセスランキングをもっと見る

page top