東日本大震災5年、心折れそうになる…。進む工事と見えてきた課題 画像 東日本大震災5年、心折れそうになる…。進む工事と見えてきた課題

インバウンド・地域活性

 東日本大震災の被災地ではこの1年、かさ上げ工事や高台移転による住まいの再建や、道路や鉄道などの基幹インフラの再開・拡充も続き、明るい話題が被災者を勇気付けた。関係者の努力は実を結んできている。だが、人口流出による需給ギャップや、建設関係者と地域とのあつれきなど悩みもある。
 「復興が遅れるほど人が流出していく。5年間の空白が与えた影響はとても大きい」。被災県の復興まちづくり担当者はそう受け止めている。住民の意向を調べるたびに居住希望者が減っていったからだ。「街が本来的に持っているポテンシャルもあるはずで、震災で人口が減ったから小さくすることが本当に良いことなのか。そこは悩むところだ」と話す。
 あるゼネコンの幹部は「復興計画を粛々と進めるのがわれわれの使命」としつつ、「時間軸がやはり大切だった」と感じている。被災地に安全・安心の基盤が構築されたことは地域にとって必ず役立つと思うが、「短期的にはたぶん空きが出てしまうだろう。そうなると過剰と見えてしまう」と不安がある。
 今後、事業量が減っていくことへの懸念も強まっている。「仕事がしぼんでいく時にどうしのぐかが大きな宿題」「競争が激しくなっており、経営も厳しくなってきている」。地域建設業のトップからはこうした声が聞こえる。
 1日も早い復旧・復興を目指して大量の建設業関係者が被災地に入っている中で、地域との共生も課題になっている。先月20日、国と福島県南相馬市が福島第1原発事故に伴う避難指示区域の解除に向けた説明会を開いた際、象徴的なやり取りがあった。
 参加住民から強い要望の声が上がったのは、除染の徹底とともに、治安対策だった。原発がある福島県浜通り地方で除染作業員を容疑者とする事件の報道が目立っていることが背景にある。参加した男性が「すべての除染作業員が悪いとは言わないが、除染作業員の出入りが無くなった時点で(避難指示を)解除してほしい」と求めると、会場がざわついた。
 同市の桜井勝延市長は、こうした不安に理解を示しつつも、除染作業員がいなくなった段階での解除は現実的ではないと説明。防犯カメラの設置や関係事業者への指導徹底を図る方針を示し、こう付け加えた。
 「(除染作業員の)夜の外出は事業者を通じて規制してもらっている。皆さんがほかの所に行って『出歩くな』と言われた時にどれほど負担か分かると思う。『ありがとう』と言葉を掛けることも、除染作業員が規律正しく過ごす動機付けになる。声掛けからやらないとこの地域は良くなっていかない」。さらに、同市の除染担当職員についても、「『一度もほめられたことがない』と言う人が多い。皆さんからなじられ続け、心が折れそうになっている。でも、やらなければいけないから、やっている」と苦しい胸の内を説明した。
 男性と市長のどちらの発言の後も、会場からは拍手が起きた。そのことが、問題の難しさを図らずも示している。大多数の人は、まじめに働いているが、そこにはなかなか焦点が当たらない。
 福島県内のある建設業関係者は「不祥事があると、会社員ではなく、除染作業員という言い方をされる。除染作業員が悪い代名詞のように使われている」と不満を漏らす。
 感謝とともに、不安や苦悩も抱えつつ、被災地は6年目の春を迎えようとしている。

東日本大震災5年/心折れそうになる…地域との共生難しく/進む工事と見えてきた課題

《日刊建設工業新聞》

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