【大震災5年-これまでとこれから・12】内閣府防災担当政策統括官・加藤久喜氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・12】内閣府防災担当政策統括官・加藤久喜氏

インバウンド・地域活性

 ◇防災・減災推進を国民運動に/全国規模の広域対応不可欠
 東日本大震災では、従来の防災・減災の考え方に対して二つの大きな課題が浮き彫りになったといえる。
 1点目は、防災・減災対策の前提となる災害時の被害想定の問題だ。東日本大震災は、地震の規模を示すマグニチュードが9・0と国内観測史上最大級の巨大地震で、これに伴って発生した津波が太平洋沿岸部に甚大な被害や福島第1原発の事故といった想定外の事態を次々ともたらした。防災・減災対策を考える際は「想定外」をなくさなければならない。
 震災後は、実際に甚大な被害をもたらした過去最大クラスの地震や津波を前提にして被害想定を見直してきた。中でも津波対策の強化を重視し、南海トラフ巨大地震の被害想定を見直したほか、新たに日本海で大地震が起きた場合の津波高想定を国土交通省と連携してまとめた。首都直下地震の被害想定も見直し、現在はそれぞれの被害想定に基づいて対策を実際に進めているところだ。
 2点目の課題は、全国規模での広域的な災害対応態勢を構築しなければならないということ。災害対応は市町村が主体となって取り組むのが原則だが、東日本大震災のような大規模災害に単独の市町村や都道府県だけで対応するのは難しいことが明らかになった。そこで災害対策基本法を改正し、国による広域的な災害応急活動の調整や避難誘導活動を位置付けた。
 南海トラフ巨大地震と首都直下地震への対策の強化では、それぞれ特別措置法も制定した。特措法に基づいて国は昨年、南海トラフ巨大地震の応急活動計画を作り、首都直下地震の応急活動計画も今月中には作る予定だ。首都直下地震の計画では、警察・消防・自衛隊の対応や物資の輸送方法といった基本的事項に加え、人や物が一極集中している首都圏ならではの対策に配慮する方向だ。
 例えば、首都直下地震が発生しても政治・経済の中枢機能を維持できるようにする業務継続計画(BCP)の具体化や、大量発生が見込まれる帰宅困難者の受け皿確保に配慮する。いずれの課題も民間の協力が不可欠だ。昨年9月に安倍晋三首相が提唱して官民で発足した「防災推進国民会議」を通じ、民間に協力を呼び掛けていきたい。
 昨年3月に仙台市で開かれた第3回国連防災世界会議で採択された2030年までの防災対策指針「仙台防災枠組み」では、あらゆる政策や取り組みに防災の観点を組み込む「防災の主流化」が打ち出された。防災・減災対策は政府や自治体の防災部局だけでなく、企業や住民も含めた社会全体で推進していくことが必要だ。
 昨年、災害対策基本法に基づいて応急復旧などに迅速に対応してもらう国の指定公共機関に日本建設業連合会と全国建設業協会を指定した。災害が起きると人命救助の現場がマスコミによく取り上げられるが、そこに至ることができるのは初動段階で建設業と国交省の地方整備局が一体となって道路啓開などに取り組んでいるからだ。
 近年は土砂災害や火山噴火災害なども頻発している。災害リスクが高まる中、今後は河野太郎防災担当相が防災・減災を国民運動にしたいと言われているように、国民総ぐるみで対策に取り組む必要がある。(随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・12/内閣府防災担当政策統括官・加藤久喜氏

《日刊建設工業新聞》

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