大震災5年-これまでとこれから・11。NHK解説主幹 防災担当の山崎登氏 画像 大震災5年-これまでとこれから・11。NHK解説主幹 防災担当の山崎登氏

インバウンド・地域活性

 ◇防災文化を地域に根付かせよ/「正常化の偏見」克服する情報を
 東日本大震災の被災地を見て回ると、復興がまだ形になっていないと感じる。これにはいくつかの理由が考えられる。一つは、再度の津波被害を避ける目的で高台移転や土地のかさ上げなどを行ったため、がれきを片付ければすぐに復興できるという状況ではなかったことだ。それだけ広域で甚大な被害だったということで、その復興は日本人全員で背負っていかなければならない。5年が経過したが、復興はまだ道半ばというメッセージを国民に送り続ける必要がある。
 三陸地方は、震災前から日本で最も津波に対する防災意識が高く、防波堤などのハード整備も進んでいた。その地域でこれだけの被害が発生した。防災関係者は大きなショックを受けたはずだ。震災後、「想定外」を解消するため大規模地震時の津波高などの予測値が発表されている。その数字があまりにも大きく、避難などのソフト対策ばかりが強調されている。
 もちろんソフト対策が重要なことは間違いないが、国土交通省までもがソフト対策ばかりに目が向いていると、ハード面の防災対策のあり方を誰が提案するのかということになる。「粘り強い」構造の防波堤などの整備を国交省は進めているが、こういう防波堤なら第1波、第2波まで持ちこたえられ、避難時間を何分稼げるといった科学的な提案を行った上でハード・ソフトの両対策のベストミックスを議論すべきだ。
 もう一つ気になる点は、西日本などで整備が進む津波避難タワーだ。1000年に1度の災害に備えるのに、50年程度しか持たない鉄筋コンクリート造などが多く、普段は入り口に鍵がかっている施設だけでよいのか。緊急時に逃げる施設は必要だが、防災対策を地域の文化としてもっと取り入れるべきだ。
 静岡県袋井市は、津波発生時に約1300人が避難できる「湊命山(みなといのちやま)」を13年に造営した。江戸時代に高潮被害を受けた後造られた「命山」を参考にし、震災後に新たに海抜10メートル程度の盛り土の山「平成の命山」を造った。頂上部は公園にし、登山道脇には桜を植えた。普段から市民が憩いの場として使い、何年も残る施設だ。「防災文化」を地域に根付かせるにはこうしたハード整備を考えてもよいのではないか。
 震災以降、気象庁や国交省などから各種の防災情報が発信されているが、受け手側がその情報を十分に理解しているかといえば決してそうではない。避難勧告が避難指示に変わることがどういう意味を持つのか。避難指示が出れば食事中でもはしを置いてすぐ避難する。情報の意味を理解してもらえるよう情報の出し手側も考える必要がある。
 防災情報は単なるインフォメーションではない。命にかかわる情報だ。情報の出し手側は受け手側と普段からコミュニケーションを取り、情報の意味を伝えなければいけない。いわゆる情報リテラシーが求められる。
 人はみんな「逃げたくない」ものだ。複数の情報を得てやっと重い腰を上げる。「正常化の偏見」と言われるが、それをどう克服するか。命にかかわる情報をどうすべての人に理解してもらい、行動に移してもらうか、われわれマスコミも含めて行政は考えていかなければならない。(随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・11/NHK解説主幹・防災担当・山崎登氏

《日刊建設工業新聞》

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