震災5年-これまでとこれから・10/土木研究所理事長・魚本健人氏 画像 震災5年-これまでとこれから・10/土木研究所理事長・魚本健人氏

インバウンド・地域活性

 ◇地域の将来計画に基づき対応/時間軸で説明できるメニューを
 大きな災害があると、従来考えていたかもしれないがそれほど大事になるとは想像していなかったことが如実に表れる。そういうものの原因をはっきりさせ、これからの対策にしっかりと生かしていくことが重要だ。テーマが多岐にわたる中、土木研究所は主に道路と河川に関わることを担当している。
 東日本大震災では、地震による被害は少なかったが、津波で道路の橋梁が流されるなどした。橋梁はもともと津波が直接押し寄せることを想定した構造設計にはなっていない。津波が来た時にどのような力が作用するかをはっきりさせることで、これから新たに造ったり、架け替えたりする際にどういう構造にしたらよいかを選べるようしておく必要がある。このための実験をかなり重ねてきた。
 河川堤防では液状化がクローズアップされた。特に堤体自体が液状化する現象が大きな問題となった。土木研究所では、堤体内の水位を下げる工法やのり尻部の強度を高める工法の有効性を確認し、復旧や対策事業に反映させた。
 震災後、関連学会と共同でがれきの利用方法に関する検討も行った。関東大震災や阪神大震災では、発生したがれきを海面の埋め立てなどに有効利用した。だが、今回のような震災では同じようにはいかず、細かく分けて高台移転などの際に少しでも有効利用できる方法を考えた。こうした震災が再び起きた時にどうするか、一つの参考になるだろう。
 震災で多くの教訓を得られた。思わぬところで役に立ったものも多く、例えば道路や鉄道の盛り土区間が津波の浸入を食い止めたこともその一つだ。
 津波の被害に見舞われた地域は、以前から過疎化が進んでいたところが多い。ある意味で震災は大事なターニングポイントになる。今までは人々が元の場所に戻れるように土地を整備したり、建物を建てたりしてきた。これに対し、今回は高台移転などその街での将来のなりわいまで考えた計画が進められている。
 人口減少時代に入った日本では、災害が起きなくても過疎化は進む。ここにもあそこにも道路や上下水道などを整備してほしいと言われても、それに応えられるだけの財源はない。震災復興とは別に、過疎化で間引き的に家がなくなっていく地域をどうするのかという問題にも対応しなくてはいけない。今後は地域計画とインフラがより密接に関わってくるはずだ。
 インフラを長持ちさせるには、それだけのものを造らなくてならない。これまでの設計は横軸に時間が入っていなかった。将来的にこの地域や街はこうあるべきで、だからこのインフラは50年、100年持つようにしないといけないといった説明が求められる。そこで重要になるのが、このまま放置したらあと何年で壊れてしまうので、このやり方だったらこれだけ持つなどといったメニューをそろえておくことだ。
 それを可能にするだけのデータはあるはずだが、それぞれのインフラ管理者などが保有しているために一元化されておらず、具体的にどういった内容のものかもよく分からない。ビッグデータを活用する話でも、ターゲットが何かが決まらないと出てこない。これからの大きな課題だろう。
 (随時掲載します)
《日刊建設工業新聞》

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