今年は特区民泊元年! 全国初の東京都大田区の取り組みを探る
インバウンド・地域活性
これは大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業、いわゆる特区民泊と呼ばれ、民泊を受け入れる施設を公に認定しようという取り組み。近隣住民とのトラブルを防ぐとともに、訪日外国人客が安心して安全に民泊施設を利用できるように整備するのが目的だ。
条例の施行にあわせて大田区では1月27日から全5回にわたり、特区民泊で訪日外国人客の受け入れを検討する事業者向けに説明会を実施。3月1日に開催された最終の第5回まで、毎回定員を上回る盛況ぶりで、全5回の参加者数は延べ約1000人に及んだ。
会では、「特区民泊の審査基準、指導基準等」「特区民泊を始めた場合の固定資産税への影響」「認定施設からのごみ排出」について説明が行われたが、いくつかあるポイントの1つは、特区民泊の施設に旅館・ホテル等に準じた消防設備基準が求められること。この基準は、自動火災報知設備の設置や避難経路の表示などだ。
また、条例で定められる施設としての要件を満たす必要がある。施設要件は、清潔な居室を提供することや、利用客が理解できる外国語で施設の使用方法や廃棄物の処理を案内できるほか、緊急時の対応が可能な体制を整えておくことなど。
そこで、特区民泊の申請の流れは、まず、区の生活衛生課と管轄の消防署等で事前相談を行い、指定の消防設備基準や施設要件を満たすかを確認。必要に応じて予定施設の部分改修が必要なケースも想定されるので注意したい。次に、近隣住民への周知を行う。その後、特定認定申請書に必要書類を添付して申請を行い、認定を受けられれば認定書の交付を受ける。
なお、この流れの中で「近隣住民への周知」は、特区民泊を予定している施設の近隣住民に対して、特区民泊事業を始めることを案内し、理解を得ること。近隣住民を訪ねて案内したり、案内書をポスティングしたりなどして行う。近隣住民への配慮としてはほかにも、施設についての苦情等を受け付ける連絡先を施設にわかりやすい場所へ掲示することが求められている。そして仮に苦情を受けた場合、区にその報告を行うことも必要だ。
実際に訪日外国人客を施設に受け入れる場合、滞在者の使用開始時と使用終了時にパスポートの提示やその写しを保管するなどの本人確認が求められる。これは仮に感染症などが発生した際の追跡調査に利用するほか、不法滞在やテロといった危険性を防ぐためのもの。これに対して説明会の質疑応答で、参加者の不動産業者から、本人確認は立ち会いで行わなければならないのか、パソコンを使ったビデオ通話など、遠隔で行うことは可能かという質問があった。