【大震災5年-これまでとこれから・9】建コン協会長・長谷川伸一氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・9】建コン協会長・長谷川伸一氏

マネジメント

 ◇ハードとソフトの最適化が重要に/安全と次の時代への対応両立を
 東日本大震災では、1995年の阪神大震災以降に国や地方自治体と企業の間で災害協定が結ばれるなど被災時の組織対応が整備されていたおかげで応急対応は円滑にできた。復旧・復興事業では15年8月までに、岩手、宮城、福島の被災3県に延べ80社の会員企業から累計200万人が派遣されている。
 会員が震災の復旧・復興でどう動き、どう貢献したかをまとめた復興誌を3月末に作成し、一般に配布する。次に震災が発生した時の復旧・復興に生かせる事例に絞って掲載する。大震災を風化させず、インフラの調査・設計分野で国土づくりに貢献する建設コンサルタントの役割をしっかりと発信する必要があると感じている。
 震災直後には「ハード(基盤整備)とソフト(避難)のベストミックスで人命を守る」という復興に関する緊急提言もまとめた。技術を駆使してハードで守り、地元とのコミュニケーションの中で逃げる方法を教育する。インフラの整備は平常時と異常時という一つの側面で考えず、多重性で考えることが重要だ。東日本大震災の教訓は、インフラが地震に耐えられても津波には耐えられなかったことだ。過去の災害を超える災害が来るという防災対策の新たな考え方が必要であり、平常時だけでなく、異常時にも機能するインフラを常に考えてセットで提案し、ハードとソフトの組み合わせによる多重防御を推進するべきだ。
 被災地の復興に従事している使命感が技術者としての成長を促し、現地の人と喜びを分かち合える充実感を得た人も多かった。若いエンジニアの中には、被災地の現場で被災者の要望を形として実現し、本来の土木の姿を経験したことでこの職業の素晴らしさを再認識した人もいた。こうした思いを抱いたことは業界にとってよかった。
 今回の震災では、復旧・復興を迅速に進める仕組みとして、道路分野で事業促進PPP、復興まちづくり分野でCM(コンストラクション・マネジメント)などが導入された。将来、発注者側の技術者が少なくなれば大量の業務をさばくために民間がその業務を支援するPPP、CMなどの仕組みが有効になるだろう。こうした新しいスキームが平常時の業務発注に広がることが異常時の円滑な対応にもつながる。新しいスキームへの参入を通して平常時に地域に入り、市民らとの接点を増やすことは大切なことだ。
 緊急時の復旧体制はもう一度考えるべきだろう。技術者が少なくなる状況下でも、何かあれば技術者が活躍できる仕組みが必要だ。特区のようなイメージだが、人命を守ることを最優先し、書類審査をせずに民間が判断できる仕組みを構築してもらいたい。
 インフラの老朽化対策は今が節目の時期にある。地球温暖化や、多発する大地震など環境の変化に加え、技術も急激に進歩している。今から50年後には技術も相当に変わるだろう。例えば、道路は車両の自動運転システムが普及すれば白線や標識が要らなくなるかもしれない。維持更新にはこうした将来の変化を見据えた考え方を取り入れる必要がある。将来的に起こり得る災害を考慮した安全・安心と、次の時代への対応の両立が求められる。
 (随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・9/建コン協会長・長谷川伸一氏

《日刊建設工業新聞》

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