【建設業「命」の現場で・22】第4章・われらの責任/2011年4月6日 画像 【建設業「命」の現場で・22】第4章・われらの責任/2011年4月6日

インバウンド・地域活性

 2011年4月6日。福島県南相馬市の石川建設工業は、東日本大震災で福島第1原子力発電所の事故が起きた後、県内建設企業として初めて原発から20キロ圏内に入った。津波にのまれた人の遺体があるかもしれない中、重機で慎重にがれきを取り除くにはプロの技が不可欠。社長の石川俊に2日前、福島県警から協力要請があった。「あの時、入ってよかった」。今、そう思っている。
 原発の原子炉建屋で水素爆発が起きて以降、多くの人が同市を離れた。石川は4月17日、ある大手マスコミに頼まれ、市内を撮影して回っている。依頼した記者は、原発から30キロの地点で待っていて、テレビカメラを受け取ると、外へ去っていった。当時の福島は、そういう場所だった。
 政府の避難指示で20キロ圏内は手つかずのまま。犠牲になった社員の家族も、そこにいた。「会社の先輩が守ってきた縄張りには、原発があろうと何だろうと、先に入らなきゃ駄目だと思った」と振り返る。「それが責任であり、地域への愛情だ」。20キロ圏内に入る社員には危険手当を出し、安全管理をより徹底させた。東京大学医科学研究所と連携した内部被曝ひばく調査や、専門家によるカウンセリングも行った。
 「本音を言えば、企業存続のための手段だった。復旧・復興のすべてに関わりたいという明確な意思表示だ」とも。なりわいとしての建設業の生き様を凝縮する言葉だ。将来が安定するよう戦略を持って経営に当たることこそが社長の任務だ、と。
 石川は仙台市出身で、大学を出て東京で別の仕事をしていた。縁あって南相馬市に来て、建設会社を継いだ。震災前は事業量も社会的評価も落ち込むばかりで、「全然楽しくなかった」。それが一変した。「大変だったが地域に貢献できた。社員さんの給料を上げて喜ばれた。そんな思いをしたことがなかった」。
 だが、復興が終われば仕事は激減する。将来の展望をどう描くか。石川は、今の姿にヒントがあると言う。現在、福島の地域建設業は、復旧・復興事業と除染業務の二つが仕事の柱だ。複数社で組合を結成して除染業務を受注するケースもあり、経営を下支えしている。
 石川は、競争で獲得する公共工事と、労働集約型の継続的な仕事の両輪を持つことが理想形と考える。除染をインフラの維持管理に置き換えれば、同じ形になる。「共同受注で安定して維持管理の仕事を続けられれば、最低限の人を雇用でき、災害時も対応可能だ。それは必要な社会コストと考えるべきだ」。
 震災後、労務も資機材も不足したが、結果的に被災地に多くの人と物が集結した。被災地外の力を借りる「復興JV」制度や、積算額と実勢価格のかい離を埋める「復興係数」の創設など、国土交通省が対策を講じたからだ。石川は、「効果があった対策にこそ、担い手を増やすカギがある。実効性ある手段は恒常化すべきだ」と指摘する。それが、地域の安全・安心を支え続けるための一つの解だと考えている。
 同市の人口は約6・3万人(15年2月1日時点)で、震災前の約7・1万人に近づいてきた。建設業を介した資本の再配分が大きく寄与したと石川は見る。生活が成り立てば故郷に戻ってくる。同社の社員がそうだった。「私たち自身が『公共事業』なのだ」。それが危機を経て抱いた実感だ。=敬称略、第4章終わり
 (ご意見・ご感想をメールでお寄せ下さい。東北支社・牧野洋久、mak@decn.co.jp)

建設業「命」の現場で・22/第4章・われらの責任/2011年4月6日

《日刊建設工業新聞》

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