【大震災5年-これまでとこれから・7】日本建築学会会長・中島正愛氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・7】日本建築学会会長・中島正愛氏

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 ◇関係分野包含した提言重要/地域に根差した災害対応支援
 1995年の阪神大震災以降、耐震改修や設計方法に新しい技術と仕組みが導入され、その効果は東日本大震災で発揮された。阪神大震災の3年後に公表した3次提言が建物の耐震安全性向上など建築構造系の改善案を中心とした内容だったのに対し、東日本大震災から2年後に公表した2次提言は「津波」「災害対応」「首都」「原発」「継承」の五つを基軸にまとめた。
 「津波」では耐津波設計、新性能設計、少子高齢化を踏まえた市街地設計のあり方、「対応」は生活再建に向けたプロセスやストック活用策、「首都」はDCP(地域継続)の視点での災害対応の推進、「原発」は福島第1原発事故で問題となった省エネと代替エネルギー策、「継承」は記録を残すことなどを提言した。
 東日本大震災は広域性を持ち、復興の道のりも長いため、環境・計画・歴史といった建築のすべてのジャンルを包含して提言している。学会の立場からは個別の研究だけが表に出るのは必ずしも社会のニーズに応えることにならない。セットで提言することが社会への責任を果たすことになる。建築は人々の生活・住まいの根幹に関わる専門分野であり、社会との連携、市民との対話を通して復興に貢献する。市民の意見を適所で吸い上げながら、その声を研究開発にも役立てる姿勢が大事だ。
 防災・減災には「予測」「予防」「対応」の三つの構成要素がある。東日本大震災の経験から、どれだけ被害を軽減し、早く通常の生活に戻すかというレジリエンス対応の考えが重視され始めた。地震に負けない建物をつくる予防の部分が建築の本流であることはもちろんだが、緊急地震速報や豪雨レーダーなどの予測の最新技術をうまく利用すれば防災・減災に役立つ。ただ、「対応」は地域によって異なる。地域に根差した対応方法を考え、実践していく上で大学がキーになるだろう。
 地方自治体は人的資源が豊富なわけではなく、担当者も数年で部署を代わってしまう。恒常的にサポートする体制があることが重要だ。普段から行政、民間企業の人たちが集まり、話をしていれば災害対応も異なってくるはずだ。災害対応では土地勘、経験(訓練)、平常(人間関係)が重要だ。大学を中心とした協力体制はこの三つを活性化させられるだろう。
 建築が最も社会の要請に応えられる分野の一つが災害対応であることは間違いないが、災害に特化した研究だけでは問題は解決しない。災害対応の強化と低炭素社会の実現は密接に関係している。災害をうまく抑えなければエネルギーの使用が増える。優良ストックに移行させれば被害が減り、カーボンニュートラルも進む。構造、環境など縦割りだけで進めるのではなく、横のつながりを意識し、協調しながら取り組むことが社会貢献になる。
 災害対応力の強化やカーボンニュートラル、ストック活用、地域創生などへの貢献を考える上で、少子高齢化とグローバル化(サプライチェーンやBCPの確保)への対応、ビッグデータ、Iot(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの進展を含むICT(情報通信技術)の利活用という三つの視点を頭にたたき込んで施策を展開しなければいけない。(随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・7/日本建築学会会長・中島正愛氏

《日刊建設工業新聞》

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