建設現場の労災死傷者が減少…業種別では依然として最多 画像 建設現場の労災死傷者が減少…業種別では依然として最多

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 昨年の建設業の労働災害による死傷者が減少し、ゼネコンの安全衛生活動が奏功してきたとの見方が出ている。厚生労働省がまとめた15年の労働災害発生状況(2月速報値)によると、建設業の死傷者は1万4941人で前年に比べ1641人(9・9%)減った。ただ、ゼネコン関係者の間には「15年は工事量が思ったほど多くなかった。(減少は)一時的な結果」との受け止め方も多い。今後も安全対策の一層の強化が求められそうだ。
 昨年、ある橋梁上部工事の現場で事故が起きた。型枠取り付け中に作業員が斜材コンクリートの上面を6メートルほど滑落して垂直材に衝突し、脚を負傷した。安全帯を使用していなかったという。別の現場では、「そこじゃない」と声を掛けられて引き返した作業員が手すりのない部分を突き抜けて転落し、骨折する事故があった。
 「言い訳にはならないが、たまたま起きた事故が多い。起きるわけないのになぜ、まさか、と思わされる」。ある大手ゼネコンの安全担当者は、最近の事故の現状をそう説明する。
 一般作業員の安全確保を担う職長が、逸走した台車を善意で止め、負傷した事故も起きた。危険意識が募る5メートル以上の高さからの墜落事故が少ない一方、5メートル未満での落下事故は減っていない。「所長の指揮の下、安全対策が素晴らしい」と評価された社内有数の現場で事故が起きた企業もあった。
 ある建築工事の現場。清掃作業のアルバイトとして入っていた75歳の労働者が階段でつまずいて転倒した。「65歳以上の労働者は山ほどいる。オペレーターなら70歳も多い」。ある大手ゼネコンの担当者は一部の現場の状況をそう指摘する。現場労働者の平均年齢の上昇に伴い、高齢者の事故が目立つ。「若手と新規入職者、高齢者、相応の災害が発生している」(担当者)という。
 厚労省の統計では、件数は減ったものの、建設業の死者は313人(前年比53人減)で業種別では依然として最多。そうした事情もあって、ある大手ゼネコンは「赤チン災害のような軽微な事故もすべて報告させる」ことで原因の究明を徹底している。過去からのデータを念頭に「災害に年齢的な傾向はない」と捉え、あるゼネコンは年齢や経験年数にこだわらない対策の必要性を強調する。
 ベテランの作業員やオペレーターが安全率を自己判断した結果、事故が起きた事例もある。「作業効率を重視する協力会社の提案について、安全性を踏まえてどう調整するかが元請の役割だ」(大手ゼネコン安全管理担当者)。協力会社からの提案に熱心に耳を傾けつつも、監督員の思考が作業効率に偏りすぎないよう職員を教育しているゼネコンもある。
 「忙しいから事故が起きるとは思っていない。歩掛りの山と谷が大きいと起こりやすい」。そうした安全管理担当者の思いもくんで、協力会社への発注の平準化を今まで以上に検討するゼネコンも増えつつある。
 15年の死傷災害の分析結果は4月下旬にまとまる見通しだ。「元請、協力会社とも事故をなくしたい思いは同じ」(準大手ゼネコン安全管理担当者)。結果を踏まえ、ゼネコンの安全対策がさらに活発化しそうだ。

現場の労災ー減少しても対応強化/15年は1割減も「まさか」「なぜ」の事故減らず

《日刊建設工業新聞》

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