【建設業「命」の現場で・21】第4章われらの責任/ウイン・ウインは地域を巡る 画像 【建設業「命」の現場で・21】第4章われらの責任/ウイン・ウインは地域を巡る

マネジメント

 西松建設社長の近藤晴貞は、東日本大震災の発生以降、毎年6月になると宮城県名取市を訪れている。仮設住宅の隣接地にひまわりの苗を植える「ひまわりプロジェクト」のイベントに出るためだ。同市内で実施された「下増田臨空土地区画整理事業」の業務代行を手掛けた経緯から、同市内に所有地があり、震災後、そこを仮設住宅用地として無償提供し、花の広場も設けた。夏になると、道行く人が力強く花開いたひまわりに目を止める。「せっかくできたご縁だから、継続的に地域と関わりを持っていきたい。そう考えると『工事だけすればよい』とはならない」。近藤はそう話す。
 同社は今、同市が閖上ゆりあげ地区で進める被災市街地復興土地区画整理事業を、設計・施工を担うJVの代表企業という立場で手掛けている。公募型プロポーザルに応募し、受注を勝ち取った。かさ上げなど日々進む工事が被災者を勇気付けている。
 ゼネコンである以上、受注した工事をしっかりと成し遂げるのは当然のこと。だが近藤は、そこだけにとどまらずに復興を後押ししたいと考え、市内の市民団体らに助成する「まちづくり基金」も立ち上げた。「地域の人たちが、しっかりとした意思を街に入れ込んでいくことが復興には必要ではないか。意欲のある人が増えていけば、街は良くなるはず。そうした活動を少しでも手助けしたい」。
 近藤が大事にしているのは、地域とウイン・ウインの関係を構築することだ。小さな好循環を積み重ねて地域の価値が高まっていけば、自分たちにも良い影響を及ぼす。それは、受注につなげたいということとも少し違う。「例えば、優秀な若者が、名取での取り組みに共感して就職してくれるかもしれない。いろいろな形で返ってくる。それもウイン・ウインだ」。
 建設業だからこそできる社会貢献もある。近藤は、そうした意識を常に持って地域と向き合うことが、建設業へのまなざしを変える力になると思っている。
 「やっぱり、地域の建設企業による初動対応だ。建設業の果たした役割の中で一番大きかったのはそこだと思う。なぜなら、命に直結する部分だから」。今回の震災で最も印象に残っている場面を近藤に聞くと、このような答えが返ってきた。
 地域建設業の担い手たちは、自身も被災した中で緊急物資を運ぶ道路の啓開や行方不明者捜索への協力などに黙々と取り組んだ。「東北の地域建設業は震災前、経営が非常に厳しかった。何とか踏ん張って経営してきたからこそ初動対応ができた。地域を熟知し地域を愛している人たちの存在がいかに大事か、痛感した」。近藤は地域建設業の全国組織である全国建設業協会(全建)の会長も務めており、実情をよく知っている。だから余計にそうした思いも強い。
 それは、今後の課題に直結する話でもある。地域建設業の持続可能性を高める取り組みはいまだ途上段階にある。地域建設業が倒産していたが故に初動対応が遅れ、犠牲が広がった…。もしもそうなったら、それは人災ではないのか。そうした危機感も抱きつつ、今を見つめている。=敬称略
 (ご意見・ご感想をメールでお寄せ下さい。東北支社・牧野洋久、mak@decn.co.jp)

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《日刊建設工業新聞》

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