【震災5年-これまでとこれから・6】日本原子力学会会長・上塚寛氏 画像 【震災5年-これまでとこれから・6】日本原子力学会会長・上塚寛氏

マネジメント

 ◇安全への国民の信頼が重要/廃炉時代に技術結集不可欠
 福島第1原子力発電所事故を防げなかったことは、原子力の専門家集団を自負する日本原子力学会として深く反省している。震災以降、学会のあり方を根本的に問い直し、これまでに定款を改定したほか、行動指針と倫理規定も見直した。同時に、福島の復興に貢献していくことを大きな柱に位置付けて活動している。
 学会には震災前から原子力安全調査専門委員会が常設されていた。何かあった時のための組織であり、これが震災直後から動き始めた。その後設置した「東京電力福島第一原子力発電所事故調査委員会」(学会事故調)は事故の直接原因や背後要因などをいろいろ分析し、安全の基本に関わるものなど、これから何をやるべきかについて50ほどの提言を出している。
 昨年4月、国が閣議決定したエネルギー基本計画で原子力発電は「重要なベースロード電源」と位置付けられた。今後、原子力がその役割を担っていくには、安全性と核燃料サイクルの課題に真摯(しんし)に取り組み、国民の信頼を得ていくことが非常に重要だ。
 原発の地震防災ではこれまでも、10万年オーダーで起こるかなり大規模な地震を想定して耐震性が確保されている。ところが津波に関しては不十分だった。1993年の北海道南西沖地震での津波被害もあり、それなりの対策を考えてはいたが、数百年オーダーで起きる地震での津波しか対象としていなかった。そこにはかなり齟齬(そご)があったと言わざるを得ない。
 現在、事故が起きた原子炉の廃止について、学会では「福島第一原子力発電所廃炉検討委員会」が検討を進めている。福島県内の除染や復興の問題に取り組む福島特別プロジェクトも立ち上げ、自治体や住民の要請に応じて、あるいはわれわれが自主的にアドバイスを行ったり、シンポジウムなどを開いたりしている。
 福島の復興は道半ばで、廃炉に向けてもまだ難しい技術的課題が残されている。やるべきことは多い。
 日本も今後、役割を終えるなどした原子炉の廃止措置を進めていく時代になる。これまでも技術を積み上げてきており、福島第1原発で開発される技術も生かしていけるだろう。原発の廃止措置には、建設も含めていろいろな分野の技術と産業界が関わる。
 廃炉に伴い大量の廃棄物が出るが、放射性廃棄物として扱わなくてはいけないものを極力最小化し、それ以外は合理的にリサイクルすることが求められる。これは大きな課題だ。
 原発の安全確保は5層の深層防護が基本だ。シビアアクシデントに対してはアクシデントマネジメントが重要になる。福島第1原発事故は津波で電源が使えなくなったことが主な原因だが、米国などのように電源車などの移動・可搬式機器や設備が適切に用意されていたら状況は変わっていたかもしれない。
 今回の事故を受けて原子力規制委員会が定めた新規制基準では、シビアアクシデント対策とアクシデントマネジメントがかなりよく考えられている。新規制基準をクリアすることで格段にリスクを下げられる。
 今後、震災の教訓がどこまで生かされてきているかをしっかり調べ、足らざるところがあれば、それを世の中に発信していくのがわれわれの役割だ。(随時掲載します)

震災5年-これまでとこれから・6/日本原子力学会会長・上塚寛氏

《日刊建設工業新聞》

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