大震災5年-これまでとこれから・4/東北大学災害科学国際研究所所長・今村文彦氏 画像 大震災5年-これまでとこれから・4/東北大学災害科学国際研究所所長・今村文彦氏

マネジメント

 ◇地域に根差す防災研究強化/災害学習と観光の連携を
 12年4月に災害科学国際研究所が設立されて4年。現在は兼務を含め約100人の研究員がいる。この間、地域社会が必要とする研究分野に徐々に軸足を移してきたが、4月にはより地域社会のニーズに合わせた研究体制へと刷新し、研究所の理念である「実践的防災学」の要素を強める。具体的には、ロボット開発や心身の健康、被災地支援、情報発信、地震・津波メカニズムの研究など12のユニットに再編し、地域社会が活用できる減災システムを提案することを目指す。
 これまでの研究成果は、災害科学の分野で言うと大きく二つある。一つは北海道から関東にかけての太平洋沖でプレートや断層がゆっくりとずれ動く「スロースリップ」が周期的に起きているのを発見したこと。この現象と巨大地震の発生が重なる傾向があることから、巨大地震の発生時期を推測する大きな手掛かりになる可能性がある。
 もう一つの大きな成果は、津波のシミュレーション技術の精度を高めたことだ。スーパーコンピューター「京」を使い、発生が予想される巨大津波の高さや被害範囲を即時的に解析できるようにした。
 防災・減災対策の情報をまとめた「みんなの防災手帳」を被災地の住民に配布するなど、産官学が連携して研究成果を地域に還元する取り組みにも力を入れている。研究員が個別に研究を突き詰めるだけではなく、こうした地域に根差した活動が求められる。
 14年夏に国土交通省が日本海側で起こり得る地震と津波の被害の調査・検討を開始し、従来の想定を上回る津波が短時間で押し寄せるとの結果がまとまった。県単位でも同様の検討が進み、日本海側で防災・減災対策のあり方を考える機運が高まっている。防災訓練などを定着させ、災害に備える重要性を住民に知ってもらうことが大切だ。
 現在、太平洋側の被災地では復興道路・復興支援道路の整備が進められている。それらの道路は命を守る避難場所としての機能と、被災地の復旧を支援するルートとして機能を果たす。人口減少で町の規模が小さくなる中、それらの点と点を結ぶ道路の役割は今後ますます重要になる。観光ルートとしての役割も大きい。
 ハワイやタイ、インドネシアなど海外の自然災害の被災地では、博物館が設けられたりイベントが行われたりして多くの観光客が訪れる。東北の復興を考える上で観光振興は重要な要素だ。災害の教訓を学習する目的だけでは人は訪れない。同時においしい食べ物や美しい風景を楽しめるようにする必要がある。勉強と遊びをうまくミックスすれば、被災地は大変魅力的な土地になるだろう。
 研究所では、成果の発信や被害記録の保存・活用に加え、研究者を育てる取り組みを重視している。震災後、被災地の早期復興に貢献したいという明確な志を持った学生が増えている。
 国際的な連携強化も大きな課題だ。現在はフィリピンや台湾、ネパールなどの災害調査に協力している。研究テーマには感染症や医療などの分野も含まれる。自然災害の危機管理ノウハウはテロや金融危機などにも応用できる。人災を研究テーマに含めることも、次のステップとして視野に入れている。(随時掲載します)
《日刊建設工業新聞》

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