【大震災5年-これまでとこれから・3】国交省事務次官・徳山日出男氏 画像 【大震災5年-これまでとこれから・3】国交省事務次官・徳山日出男氏

マネジメント

 ◇東北の未来を創る作業に/多重性持つインフラが必要
 東日本大震災から5年が経過する。「集中復興期間」は、被害に見舞われたふるさとを元に戻すという極めて明瞭なゴールに向かってまっしぐらに取り組んできた。その中で地場の建設業者もゼネコンも役割を発揮した。それ以前、建設業が悪玉のように言われてきた評価を変えるような献身的な働きだった。
 当時、東北地方整備局長だった。業界の皆さんとは「戦友」となって情報交換し、互いの役割を果たしてきたと思う。未曽有の災害が、気持ちが萎縮しがちだった当時のわれわれや業界に「何をすべきか」という本能を目覚めさせてくれた。
 それでも2年ほど前までは復興が遅れていると言われてきた。その土地で建物を建て替えることができた阪神大震災とは異なり、津波型の今回は、高台の造成から始めなければならなかった。そこに3年ほどの時間を要した。造成を乗り越えた先はスピード感も見えてきた。福島のように特殊なケースで手つかずの地域もあるが、それを除けば、世界が驚くほどの復興といえるだろう。
 16年度からの「復興・創生期間」では、気持ちを切り替え、未来を創る作業に入っていく。
 国土交通省は、港湾、道路、住宅など所管分野で復旧・復興に対応してきた。今後は、観光、物流、道の駅といったさまざまなツールを用い、東北の地域ごとに異なる未来に向けたテーマを、総合性と知恵を発揮して応援していきたい。東北が震災前から日本全体に先駆けるように抱えてきた高齢化や人口減少といったことも、被災地を元の姿に戻すだけで解決できる問題ではない。
 観光一つ取っても、名所旧跡を巡るだけでなく、世界中の人たちに、未曽有の災害からどう生き延びて復興を果たしたのかを学んでもらうことができるだろう。修学旅行にも絶好の場になる。建設業界には、復旧・復興で何をしたのか、そして地域を守るためにどうするべきかを伝え、実現していく役割を担ってほしい。今後も復興で食いつなぐというだけの発想からは脱却すべきだ。
 東日本大震災は「1000年に一度の災害」と言われたが、日本に災害集中期入りというのろしが上がったと考えた方がよさそうだ。近い将来、首都直下や南海トラフの大地震の発生が予想され、集中豪雨や噴火も相次いでいる。
 1959年の伊勢湾台風以降、阪神大震災と東日本大震災を除けば、災害で年に1000人超が亡くなった年はない。戦後の日本は安全・安心にコストをかけることなく高度経済成長を遂げることができた。これからは、大きな自然災害や事故、老朽化という問題に対し、余裕のある多重性を持ったインフラを作らなければいけない。東日本大震災での取り組みを風化させないよう伝承や広報にも取り組み、災害集中期間に対応したインフラへの理解も得ていく必要がある。
 東日本大震災後、「想定外」をいかになくすかが問われるようになった。技術や経済力が十分でなかった時期のインフラは、想定される一定の外力までは耐えられるような設計、整備が行われてきた。今後は堤防だけで水害から守れないのなら、避難のためのソフト方策と組み合わせることも必要だ。ハードだけに依存しない防災意識社会の構築が求められる。(随時掲載します)

大震災5年-これまでとこれから・3/国交省事務次官・徳山日出男氏

《日刊建設工業新聞》

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