【建築へ】震災復興の今をどう見る…建築家・伊東豊雄氏に聞く 画像 【建築へ】震災復興の今をどう見る…建築家・伊東豊雄氏に聞く

インバウンド・地域活性

 ◇街の個性生かした復興を/夢描ける建築で地域を元気に
 東日本大震災から3月11日で丸5年を迎える。建築家の視点から、被災地の今をどのように見ているのか。そして、復興へ向かう東北の姿から感じ取るべき学びとは何か。被災地の住民らとともにコミュニティー拠点を作り上げる「みんなの家」プロジェクトなどを通じて、東北と向き合ってきた建築家の伊東豊雄氏に聞いた。(東北支社・牧野洋久)
 --震災復興に対する認識は。
 「震災直後から感じているのは、津波でやられた街は、同じ復興の仕方でなくてはならないという平等主義だ。防潮堤を造り、かさ上げをして、山を削って高台移転をするというような同じやり方にしないと予算が下りてこないという復興には疑問がある。ある程度はやむを得ないかもしれないが、それぞれの街の個性を生かした復興が行われるべきだ。漁業中心の街と農業中心の街が大きく違うように、地域によって独自の安全・安心の考え方があるはずだ」
 「人口が過密な大都市部では、均質化により効率化を図る近代主義的な作り方でやらざるを得ないが、津波で甚大な被害を受けた東北の三陸エリアは過疎の地域だ。近代主義的なやり方ではなく、近代の次に来る時代に向かい合うべきだ。予算の大枠だけを決めて、地方自治体などにもう少し自由度を与えていれば、住民のやる気がもっと出てくると思う。復興した街を使うのはこれからだ。地域の人が主体となって、個性ある街にしていってほしい」
 --「みんなの家」の成果をどう見る。
 「人が集まって話したり、ご飯を食べたりすることは非常に重要であり、仮設住宅の中などで、そうしたコミュニティーの場を作ろうと考えた。自分たちでお金を調達して、土地は地方自治体や民間の方に用意してもらった。最近は、民間の土地をお借りするケースが多い。農業の復興を目的にしたものもあり、福島県相馬市と南相馬市では、小さな体育館のような施設を作っている。今後は、移転や解体が必要になるものも出てくるだろう。運営支援や移設の相談などに乗るためのNPOも立ち上げた」
 「行政が住民向け施設を整備する際には、どうしても管理という観点が中心になりがちだ。そうではなく、本当に住民が喜ぶような物を造るにはどうしたらいいかを、まず考えるべきだ。行政と住民、設計者が分離して、互いが要求し合うような関係になると、血の通わない建築になってしまう。住民と一緒になって『みんなの家』に取り組んだことが、そこを考え直すきっかけになった。行政と住民がいかに同じ方向を向いてものを考えられるかは、東北に限らず、公共建築全般において非常に大きな問題だ。公共施設を考える新しい手法になると思っている」
 --被災地での教訓を踏まえた取り組みは。
 「今治市伊東豊雄建築ミュージアムを作っていただいたことがきっかけで、瀬戸内海の大三島(愛媛県今治市)に月に1回程度通っている。『みんなの家』での経験を生かしながら、地域を元気にしようと、島の方と一緒に議論している。取り組んでいるうちに、東京でやっている建築塾の塾生などから移住する若者が出始めた。一人は、島でワイナリーを作るために畑を耕している。人によっていろいろな豊かさがあるはずで、それを発見できたら夢に変わる。そうした夢を描ける社会であることが重要だ」
 「小さな街は消滅すると言われているが、むしろ、取り残されているような場所が元気になることが、これからの日本を元気にする一番のエネルギーになるのではないか。被災地も同じだ。東北には、魚などおいしい食材がたくさんある。神話が残っているような美しい風景の場所も多い。そうした素材を上手に加工してアピールしていけば、伸びしろはもっとある」
 「ミュージアムを作った当初は、そこまでは考えていなかったが、ミュージアムが一つの仕掛けになって、物語が生まれ始めた。若い建築家たちには、『夢を描き続けられる建築をつくるということだけは捨てずに頑張ろう』と言っている。そうした力が建築にはある」。

建築へ/建築家・伊東豊雄氏に聞く/震災復興の今をどう見る

《日刊建設工業新聞》

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