【震災5年-これまでとこれから】港湾空港技術研究所理事長・高橋重雄氏 画像 【震災5年-これまでとこれから】港湾空港技術研究所理事長・高橋重雄氏

マネジメント

 ◇減災レベル科学的に示せ/レジリエント防災が重要
 05年にハリケーン・カトリーナが米国を襲って大きな被害をもたらした。この時、沿岸防災の重要性が指摘され、レジリエントな防災対策が提唱された。日本でも検討が進んでいたが、それを具体化する前に東日本大震災が発生した。残念でならない。東日本大震災では地震・津波の複合災害で太平洋沿岸地域が甚大な被害を受けた。被災した港湾施設は急ピッチで復旧工事が行われ、大型の防波堤などを除き震災後3年以内にほぼ復旧した。
 同時に「粘り強い構造」が防波堤などに採用された。レジリエントな防災は最悪のシナリオが起きたとしても、復旧・復興を早期にできるというもの。
 そのために何をするべきか。各種の構造物を粘り強い構造にし、被害の最小化を図った。例えば防波堤の前後に特殊なブロックなどを設置した。
 研究レベルでは複合災害による被害メカニズムを検討中だ。波動地盤水路実験施設の下に振動台を設け、地震よる液状化とその後の津波被害などを科学的に調べ、減災対策につなげる。
 災害の被害が大きくなればなるほど復旧・復興は遅れる。岩手県・釜石港の津波防波堤は最終的には倒壊したが、津波高を抑え、陸地への到達時間を遅らせた。津波防波堤が釜石の人たちの命を守り、被害を軽減した。結果的に釜石市内の復旧・復興を早めたとも言える。地域の中核都市が早期に復旧・復興できたことは周辺地域にとっても重要だ。沿岸部のすべての町が大きな被害を受けていたら周辺の復旧・復興はもっと厳しくなっただろう。
 太平洋沿岸に設置したGPS波浪計が震災時に津波データを送信し役立った。正確な津波予報を行うためにも観測設備の充実は不可欠だ。GPS波浪計のデータを基に何十万にも及ぶシミュレーションを行い、データベース化している。これを使い、実際に津波が発生した際の震源地を特定し、津波高を数分のうちに逆解析するシステムを構築中だ。防災科学研究所が海底に設置している地震計のデータと併せて活用することで、より精緻な予想ができるようになる。
 防災対策の基本は「逃げる」こと、つまり避難することだ。国は津波に対する防災対策として、発生頻度の高い津波(L1)と最大クラスの津波(L2)の二つのレベルを想定し、L1では背後地の浸水を防止するとした。この方針に基づき各種の防災施設が全国各地で現在整備されている。
 ただ、この防災対策の考え方では、L2発生時の予想津波高の数値が極端に大きいため、L1を超えると、避難や津波避難タワーの整備だけという地方自治体も出てきている。これはおかしい。L1を超え、L1・5というような津波が起きた場合、こうした防災施設を整備すれば、これだけ減災効果があるということを訴える必要がある。
 減災レベルを科学的に示すのが土木技術者の役割で、そのシナリオ作りが求められている。
 昨年末、政府と自民党が提唱していた「世界津波の日」(11月5日)が国連で決議された。日本は地震・津波災害を何度も経験し、防災対策技術は世界的に見てもトップレベルにある。日本がリーダーシップを取り、防災技術を世界に発信していかなければならない。(随時掲載します)

震災5年-これまでとこれから・2/港湾空港技術研究所理事長・高橋重雄氏

《日刊建設工業新聞》

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