【震災5年-これまでとこれから】日本学術会議会長・大西隆氏/過去の災害の教訓生かす 画像 【震災5年-これまでとこれから】日本学術会議会長・大西隆氏/過去の災害の教訓生かす

インバウンド・地域活性

 ◇「防災・減災」の取り組みを世界に
 東日本大震災の発生から3月11日で5年を迎える。政府は15年度までの「集中復興期間」に続き、16年度からの5年間を「復興・創生期間」と位置付け、引き続き復興に力を入れていく方針だ。日本はこれまでの5年で何が変わったのか、これから震災の教訓をどう生かしていくべきか。産官学の識者らにシリーズで語ってもらう。第1回は、被災地の復興や原子力発電所事故などに関するさまざまな声明・提言を発信してきた日本学術会議の大西隆会長に話を聞いた。(随時掲載します)
 日本学術会議は原子力の平和利用を推進してきた。それが電力としての利用だ。当初は安全性に強い関心を持ち、何かが起きるたびに安全性をもっと高めるべきだとするメッセージを発してきた。ところが米スリーマイル島の原発事故(1979年)が起きた時に意見を出して以降、東日本大震災が発生するまでの約30年間は、チェルノブイリ原発事故(86年)やJCO臨界事故(99年)などがあったにもかかわらず、公式なメッセージを発してこなかった。
 このことが、「安全神話」というものができるのを間接的に助けてしまったのかもしれない。これまで以上に安全性を重視する観点から積極的に意見を述べていくことは日本学術会議の重要な役割だろう。
 東日本大震災の復興は、その過程が人口減少と重なっているのが特色だ。例えば昭和三陸地震津波(33年)では、被災地が漁業の適地だったこともあって人口が割と早く回復した。明治三陸地震津波(1896年)から昭和三陸地震津波までの間にも人口が増えていた地域がある。日本の人口も右肩上がりの時代で回復力を持っていた。
 これに対し、東日本大震災は人口が右肩下がりのところに起きた。津波の被災地では高台移転が多くの箇所で行われているが、そこにどれくらいの人たちが戻るのか心配されている。一つの新しい集落のコミュニティーは単位が小さく、そこで人が大きく減ると日常生活で共助の関係をなかなかつくれなくなってしまう。原発事故が起きた福島県内には、まだ一人の住民も戻れない町村がある。
 このように被災地はいまだ復興したとは言えない。一方で今回の震災の教訓として、「減災」の概念が災害対策に取り入れられるようになってきた。南海トラフ地震など次の大規模災害に備える活動も始まっている。日本学術会議でも復興と備えの両方を考えていく必要があり、1月には防災・減災を目的に約50の学協会の連携による「防災学術連携体」を発足させた。
 南海トラフ地震は揺れによる被害も大きいと予想され、阪神大震災と東日本大震災を合わせたような災害になる恐れがある。場合によっては関東大震災で多くの人が犠牲になった延焼火災による被害も起こり得る。教訓とすべきは直近の震災だけではない。
 津波に対しては逃げるための一定の時間を稼げるが、建物がつぶれるのは瞬間的。耐震補強は人命を守る上で非常に重要だ。簡便な方法で経済的かつ効果的に補強できる技術を普及させるのは、引き続き大きなテーマといえる。
 長期的なまちづくりの課題だが、危険な場所にある公共施設や住宅などを安全な場所に移していくこともしなければならない。人口が減るこれからは市街地を拡張していく必要はなく、客観的にはそうしたことができる時代になっている。そのためには情報開示が欠かせない。地方創生の中に織り込んでいくことも重要だ。安全性を重視した不動産開発のあり方がもっと問われていくことになるだろう。
 世界では水災害の危険にさらされている多くの人たちがいる。日本の経験を伝え、安全性を高めていくための国際活動もしっかりやっていきたい。近くそのための提言もまとめる。
 国際機関とも連携し、世界に防災・減災の考え方や取り組みを普及させていきたい。

震災5年-これまでとこれから/日本学術会議会長・大西隆氏/過去の災害の教訓生かす

《日刊建設工業新聞》

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