【建設業「命」の現場で・17】第3章・線引きと選択と 画像 【建設業「命」の現場で・17】第3章・線引きと選択と

インバウンド・地域活性

 ◇海の民は強かった、そう言える未来を
 東日本大震災からの復興が進む宮城県名取市の閖上ゆりあげ地区。6月には初弾の災害公営住宅で入居が始まる。ただ、同地区の想定人口は震災前の半分に満たない約2400人。住民の高齢化率も高まると見られる。スーパーや医療機関の進出は現段階で未定。鉄道の駅から離れており公共交通の充実も必要…。課題は山積みだ。
 「買い物や病院通いなどに不安を抱える人がたくさんいるのではないか」「(かさ上げ工事が進み)光が見えてきた。でもここからが難しい」。同地区の住民組織「閖上地区まちづくり協議会」は危機感を募らせる。生活の利便性確保が急務と議論を進める。
 同地区には、海からの恵みを糧に、皆が協力しながら暮らしを成り立たせてきた歴史がある。子どもや高齢者を互いが見守る雰囲気もあった。こうしたコミュニティーの再生も重要だ。町内会の立ち上げや、住民同士が顔を合わせる機会の創出なども必要とみている。
 構想段階だが、タウンマネジメントも視野に入れている。例えば、公共料金の集金業務を受託し、高齢者の見守りを兼ねて地域を回るなどアイデアは膨らむ。働いた住民が報酬を得られる枠組みができれば、サービスと対価を地域内で循環させつつ、高齢者を元気にすることも可能になる。
 同地区は、村落共同体のような素地を残しつつ、仙台近郊という立地から都市型生活も享受していた。昔ながらの良さを生かして魅力を高め、新たな形に再生する。それは容易ではなく、時間もかかるだろう。でも、強みとなり得る要素もある。
 名物の朝市は13年5月に再開し、多くの人が訪れる。国土交通省の河川防災ステーション整備や、名取川沿いのかわまちづくり事業、さらには小中一貫校やサイクルスポーツセンター、フィッシャリーナの構想も進む。近接する仙台空港は、国管理空港として初めて今年7月に民営化される。こうした動きを、復興のエンジンに生かせるかどうかが勝負となる。
 「多くの犠牲が出たため、デリケートな土地になってしまった。そのイメージを払しょくする前向きなコンセプトが必要だ」。同市など仙南地域で事業を営む竹内良人(仮名)は、そう強調する。アイデアの一つが、富裕層を呼び込む街への転換。都市部と違って豊かな住環境を確保しやすく、海辺の街なのでマリンスポーツなど余暇を楽しむこともできる。
 「富裕層や外国人は、ワーク・ライフ・バランスの充実に関心が高い。スローライフが実現できる一枚上手な街という打ち出しができれば、多様な人が集まり、ビジネスを生み出す場になり得る」と竹内。「津波に遭ったが、それでも海の民は強かった」。そう言える街にしたいと思っている。
 同協議会代表世話役の針生勉は、「いずれは、4000人規模の街を目指したい。それくらいしなければ、お金をかけて閖上を新しくする意味がない」と自らを奮い立たせている。
 「『大変だったけど戻ってきて良かったね』と話しながら、新しい街や海辺を散歩していたい」。同協議会事務局長の南部比呂志は、10年後の将来をそう思い描いている。選択の先にある未来へ、歩みは続く。=敬称略、第3章おわり
 (ご意見・ご感想をメールでお寄せ下さい。東北支社・牧野洋久、mak@decn.co.jp)

建設業「命」の現場で・17/第3章・線引きと選択と

《日刊建設工業新聞》

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