災害対応空白地域が拡大、全建会員企業不在の全市区町村の13%に 画像 災害対応空白地域が拡大、全建会員企業不在の全市区町村の13%に

インバウンド・地域活性

 ◇公共工事急減で高まる懸念
 災害復旧や除雪作業などに対応する全国建設業協会(全建)の会員企業が存在しない市区町村が増加している。全建が都道府県建設業協会に行った調査(15年11月時点)によると、不在の市区町村がある都道府県は、前回調査(11年2月)から4府県増加し、29都道府県となった。不在は全市区町村の13・2%を占める。不在であっても近隣市区町村に会員企業が存在するため、全建は今のところは「大きな支障はない」とみるが、「災害対応空白地域」が今後拡大しないか、危機感を強めている。(編集部・溝口和幸)
 今冬一番の寒波に襲われた西日本の各地では、23日から降り続いた大雪で、交通網がまひし、孤立被害や、道路での車両の立ち往生が相次いだ。「自治体の要請を受け、会員企業が対応してくれている」。県内各地で除雪作業を進めている会員企業の現状を鹿児島県建設業協会の担当者はそう説明する。徳島県建設業協会の担当者は「重機やオペレーターが減っている。30センチ以上積もった山間部や会員企業の手が届かない地域はこれから影響が出てくるかもしれない」と懸念している。
 今回の全建の調査結果からは、こうした有事への対応力の基盤が揺らいでいることが浮き彫りになった。
 前回調査の結果と比べると、宮城、福井、香川の3県は、前回あった会員企業不在の市区町村が解消された一方で、新たに栃木(不在市区町村1)、千葉(2)、滋賀(1)、京都(5)、兵庫(1)、徳島(1)、熊本(1)の7府県が不在市区町村を抱えることになった。
 前回から引き続き不在市区町村があった都道府県のうち、北海道(35)、群馬(5)、新潟(3)、長野(6)、愛知(28)、大阪(33)、広島(4)、長崎(2)の8道府県は、不在市区町村の数がさらに増えた。不在市区町村が最も増加したのは愛知(前回18)だった。
 不在市区町村がないのは18県と全都道府県の4割弱しかなく、不在市区町村の数は北海道、大阪、愛知、東京(不在市区町村15)の順で多い。大阪、愛知、東京は人口が多く、都市圏も広いため、災害が起きた時の社会的な影響は大きいが、会員企業も多いだけに不在市区町村でも近隣地域にある会員企業の応援が見込める。
 ただ、こうした大都市圏を含めて、災害などに速やかに対応する「応災力」は全国的に確実に脅かされている。今回の調査では、会員企業が今後不在になる懸念がある市区町村の有無も質問した。それによると、17府県が「ある」と回答。不在になることが懸念される市区町村の数は、秋田2、福島11、茨城7、栃木2、埼玉9、神奈川10、富山1、滋賀1、京都4、兵庫4、香川3、愛媛4、高知1、佐賀2、長崎3、宮崎4、沖縄4で、合計すると全市区町村数の4・1%に相当する。
 不在が現実になったと仮定すると、現在はすべての市区町村に会員企業が存在する茨城、富山、香川、愛媛、高知、宮崎の各県は不在のある県に転落する。加えて一部の協会は「長期的には不在となる懸念がある」と回答しており、災害対応空白地域のさらなる拡大という深刻な事態が表面化する可能性もある。
 15年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市。鬼怒川の管理工事を請け負っていたある会員企業は、社屋が浸水しながらも、二次被害を防ぐために「突貫で作業したい」と、土のうを積み上げる緊急復旧に出動した。14年8月に広島市北部で発生した大規模な土砂災害では、会員企業の存在が復旧作業だけでなく人命救助にもつながった。
 東日本大震災以降、建設投資が上向き、直近では建設会社の倒産は大幅に減少する傾向にある。それでも会員企業不在の市区町村が増えた都道府県の一部は、公共工事の請負金額が急減していることが、公共工事前払金保証事業会社の統計で明らかになった地域と重なる。
 有事の即応を災害協定に基づく義務としてだけでなく、地域に根差した事業活動を行う中での使命とも認識する地域建設業者。その姿のない災害対応空白地域の拡大は、安心・安全をどう確保するかという問題を地域にあらためて突き付けている。

スコープ/全建会員企業の災害対応空白地域が拡大/会員不在、全市区町村の13%に

《日刊建設工業新聞》

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