東京五輪特需も期待大…いま「ネジ業界」が面白い! 画像 東京五輪特需も期待大…いま「ネジ業界」が面白い!

制度・ビジネスチャンス

 多様な産業を支えるネジ。製造業を中心に幅広い分野で活躍しており、製品の安全を左右する重要な部品の一つ。ネジメーカーでは汎用品に加え、特殊用途に特化した付加価値の高い製品の開発に取り組んでいる。ここ最近は工作機械関連が減速気味ではあるものの、建築分野向けの需要が増加傾向。ネジ業界の動向を追った。

 ネジは主に“締結”の用途で用いられ、さまざまな産業で欠かせない存在だ。一般的に小型自動車では1台当あり約3000点、航空機のジャンボジェット機になると1機で約300万点のネジが使われているという。ネジの品質が製品の安全を支えているといってもよいだろう。

 需要の動向をみると、自動車関連は堅調を維持。しかし、中国経済の失速により工作機械の受注にブレーキがかかり、工作機械分野向けには一部で慎重な見方が出ている。「高まるチャイナリスクから、国内の民間企業の設備投資に停滞感を感じる」(大手ネジ商社)と懸念の声がある。

 一方、建築分野向けでは動きが見られるようになってきた。「止まっていた建築案件が動き始め、8月あたりから動きがよくなってきている」(同)との期待感もある。

 今後の展開で注目されるのは、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック向けの特需。スタジアム建設やインフラ整備など首都圏における大型開発を視野に入れている。また、大都市でのアジア人観光客の急増に伴うホテル不足問題から、ホテルの建設や改装工事などの案件も期待される。

高強度、緩み止め、軽量化・・。技術がさらに進化
 製品開発については、ネジに対しては昔も今も高耐食性や高強度、緩み止め、軽量化などのニーズが強い。ネジメーカーではこれら付加価値の高いモノづくりに力を入れている。

 例えば、あるメーカーでは高水圧に耐えられる防水ネジを開発した。ネジの座面に溝を設け、その中にニトリルゴム製パッキンを装着。ネジを締めることでパッキンがたわんで密着する仕組みだ。防水性能試験で深海に相当する水圧をかけても水漏れはないという。

 緩み止めについては、振動のある回転体に適したホーローセット(六角穴付き止めネジ)を開発したメーカーがある。ねじ込みによる圧力でネジの先端部分が拡張され、緩み止め効果を発揮。一般的にホーローセットには緩みやすいという声もあるが、独自技術で課題をクリアしている。

 盗難やいたずらを防止する性能を高めたボルトも展開されている。ボルトの形状に工夫を凝らし、専用工具を使わないと脱着ができない構造。専用工具にはシリアルナンバーが刻印されており、防犯への管理体制が整えられている。監視カメラやエアコンの室外機、太陽光のソーラーパネルなどに採用されている。

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日本ねじ工業協会・相澤会長インタビュー「進むべき道を示す」
 ネジやナットはモノづくりにおいて欠かせない基礎部品。自動車をはじめ、建築、産業機械、航空機、ロボット向けなど用途はさまざまだ。2016年の年頭にあたり、日本ねじ工業協会の相澤正己会長(メイラ会長)へのインタビューを行った。

 ―2015年のネジの需要環境は。
 「ネジのエンドユーザーはあらゆる産業で広範囲にわたっているため、各分野のデータを集計することは難しい。そのため、ユーザーの業種別で判断する必要がある。15年は工作機械向けが好調。そのほか、自動車や建築関連向けでは14年と比べて変化はなかった。そうした動向や、日本ねじ工業協会推計の国内生産高でみても15年度とほぼ変わらないだろう。円安基調で家電、カメラ、オートバイ関連など国内回帰への期待が年初にあったが恩恵は受けてはいないようだ」

 ―16年の見通しについては。
 「工作機械向けは今のところ悪い話を聞くことはない。自動車については15年と変わらないだろう。しかし、リーマン・ショック以前の状況に戻るまでには至っていない」

 「今後、ネジメーカーでは従来のユーザーだけでなく、新規ユーザーの獲得に向け技術力を駆使した締結部品をどのように開発し、いかにユーザーにアピールするかが重要になってくるだろう」

 ―日本ねじ工業協会が進めている重点的な取り組みは。
 「国家検定化を目指している技能検定では、技能検定の改訂テキスト(ハンドブック)を完成させた。会員以外でも受験できる体制を整えている。そのほか、日本ねじ工業協会創立55周年の記念事業の一環で、15年7月開催の『MF―Tokyo2015プレス・板金・フォーミング展』に日本ねじ工業協会として出展した。ネジの実態を知ってもらうように、さまざまなネジを出展した」

 「また、六角ボルトと六角ナットの日本工業規格(JIS)本体規格の切り替えについては、日本ねじ工業協会として20年までに生産・供給体制について整えると宣言している。本体規格の使用を推奨する活動に今後も力を入れていく」

日本国内で機械要素の意識が希薄に
 ―日本ねじ工業協会としての16年度活動の考え方は。
 「基本的には15年度の活動を踏襲していく。その中で技能検定についての取り組みがある。国家検定にする上での課題が実技試験であり、審査方法や判定基準(公平性)をどう保つべきなのかを検討していきたい」

 「その一方で、新たにドイツや米国などの先進諸国のネジ業界と定期的な意見交換会の機会を検討していきたい。国際標準化機構(ISO)の専門委員会『TC2(締結用部品)』の国際議長であるドイツねじ協会(DSV)のゼネラルマネージャーを招き、15年10月に日本ねじ工業協会と日本ねじ研究協会との共催で講演会と懇親会を開催した。その際に日本のネジ業界とドイツのネジ業界について話し合ったが、企業数や人員の構成など日本と共通する部分があり、大きな刺激を受けた。今後は国内から希望者を募ってドイツに赴くことも考えている」

 「色に赤・青・緑の三原色があるように、機械にも重要な三要素がある。歯車、軸・軸受、そしてネジだ。しかし国内では機械要素に対する意識は薄れており、本質的なネジの研究をする人も見られなくなった。だが、ドイツは違う。今でも本質的なネジの研究論文を発表し続けるなど、日本以上に機械要素の重要性が認知されている。このような先進諸国と意見を交わすことによって、日本のネジ業界がこれから進むべき道を導きだしていきたい」

今、ネジ業界が面白い!

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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