狙え、インバウンド需要…ホテル業界の事業戦略を追う 画像 狙え、インバウンド需要…ホテル業界の事業戦略を追う

インバウンド・地域活性

 20年にわたって続いた不況、そして08年のリーマンショックの影響などで厳しい事業展開を強いられてきたホテル業界。それが、この1~2年で爆発的に増加したインバウンド(訪日外国人旅行者)の効果で、大都市圏の宿泊施設がパンク寸前の状態になっている。これを好機と捉え、設備投資を渋ってきたホテル事業者らが、ようやく既存店舗のリニューアルや新規出店に積極的に動き始めた。2020年東京五輪を控え、都内ではさらなる宿泊需要の増加が見込まれる。今後の各社の事業戦略と行政の対応策を探った。

 ◇五輪開催控えホテル改築・改修相次ぐ◇

 最近のホテル業界にとって大きな転換点となったのが、東京五輪の開催決定だ。それを象徴するのが、「ホテル御三家」の一画、ホテルオークラ東京(東京都港区)の本館建て替え事業。五輪開催時を最新の設備で迎えるため、ブランドの顔とも言うべき建物を取り壊してまで創業以来の大事業に踏み切った。

 建て替えまでは至らなくても、東京五輪を控えてホテルをリニューアルした例は多い。東急電鉄グループの東急ホテルズは15年、旗艦ホテルの一つ「セルリアンタワー東急ホテル」(東京都渋谷区)の改修工事を実施した。そのほかの各社も客室などの付加価値向上や差別化に余念がない。

 ◇全国各地でインバウンド効果◇

 五輪効果は全国にも波及する。森トラストは、全国の観光地で展開するリゾートホテル「ラフォーレホテルズ&リゾーツ」の大規模改修工事に着手すると発表。18年までに7カ所のホテルに総額約160億円を投じる。

 シティーホテルやビジネスホテルでは、新規開業の動きも活発化。都心部ではホテル用地の取得競争が激化している。アパグループは、15年度からの5年間でホテルやマンションの開発事業に約3000億円を投資する計画を推進中。全国の中核都市に積極的に出店する計画だが、投資対象の中心が東京であることに変わりはない。

 これまで沿線地域を中心にホテルを運営してきた民鉄事業者らは、より多くの需要が見込める都心部での用地獲得に奔走。神奈川県を拠点とする相鉄グループは、14年に全国ホテルチェーンのサンルートを子会社化し、東京により重点を置いた出店計画を立てる。

 サンケイビルは、既存の中小ビルを取得・改修し、外国人観光客向けのホテルとして営業する新規事業に乗りだした。都内の宿泊需要がさらに高まるとみられる東京五輪時までに観光客の受け入れ体制を構築しようと、さまざまな形で知恵を絞る事業者が現れている。

 一方で、各社に共通しているのが「東京五輪は一過性のもの」という見立てだ。ある企業のトップは「日本だけでなく世界で観光市場は成長する。アジア諸国などの所得水準が高まり、格安航空会社(LCC)も普及している。日本を訪れるのは富裕層だけではなくなっている」と指摘する。業界全体の視線は既に五輪後に注がれている。

 全国各地のリゾートホテルでは、観光資源を生かした改修工事などが進む。温泉風呂付きの客室を設けたり、外国人観光客を想定して多様なライフスタイルに対応する客室を増やしたりする動きが広がっている。

 ◇課題は「景気に動じない産業構造」の実現◇

 ビジネスホテルのような業態でも、日本に長期間滞在して全国各地を回る旅行者を囲い込むため、観光の「ゴールデンルート(関東~関西)」や「ドラゴンルート(中部~北陸)」のルート上に重点的に出店する戦略を取る事業者が増えている。

 ただ、業界関係者の間では「ホテルは景気の感応度が高いビジネス」というのが共通認識。万が一、世界経済が不況に陥った場合にはどうするのか。観光業が日本の主要産業となるには、景気の浮き沈みにも動じない産業構造をつくることが不可欠。そのための観光振興策の推進が、官民双方に求められそうだ。
《日刊建設工業新聞》

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