半導体再編が動きだす? ルネサスCEOがわずか半年で突然の辞任 画像 半導体再編が動きだす? ルネサスCEOがわずか半年で突然の辞任

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 ルネサスエレクトロニクスの遠藤隆雄会長兼最高経営責任者(CEO)が就任約半年で辞任した。公式の理由は「一身上の都合」としているが、大株主である官民ファンド、産業革新機構と出口戦略などで意見の相違などがあった可能性もある。鶴丸哲哉社長がCEOを兼任する形になったが、それも暫定的とみられる。

 遠藤氏は日本オラクル社長などを経て今年6月に就任。この1週間前までマスコミのインタビューなどに積極的に登場し、M&A戦略の考え方を話していただけに唐突感は否めない。遠藤氏辞任は経産省や革新機構が描く半導体再編が動きだすシグナルかー。

「ルネサス再生」深層レポート。官民ファンドの救済は成功したか?
日刊工業新聞2015年6月26日付
 2015年3月期連結決算で10年の会社発足以来、初めて当期黒字を確保したルネサスエレクトロニクス。「神懸かり的なスケジュールでリストラを実行した」―。再建を主導した産業革新機構のナンバー2、朝倉陽保専務取締役最高執行責任者(COO)はこう話し、“日の丸半導体”の復権に手応えを示す。ただ半導体業界は国際競争が激化しており、これからが正念場。ルネサスは真に強い組織に生まれ変わったのか、このままスムーズに成長段階に歩を進められるのか。再生の足取りを振り返りつつ探った。

あの収益事業を売るとは・・ 
 ルネサスの業績が回復したのは、為替の円安が進んだこと、そして人員削減や工場閉鎖、事業売却といった構造改革に依るところが大きい。この構造改革を振り返ると同社の変化が見えてくる。14年3月にソニーに売却した鶴岡工場(山形県鶴岡市)。実はルネサスは13年8月、いったんは自主閉鎖する方針を掲げた。その計画に待ったを掛けたのがソニーだった。

 ルネサスは車、産業機器分野の半導体に絞り込んで経営再建を進める方針で、民生機器向けLSIを手がけていた同工場は早くから売却対象に上がっていた。13年に入ってからはソニーのほか、台湾TSMCなどとも交渉してきたが、「だらだらと長引いていた」(元ルネサス幹部)。

 そこでルネサスが決断したのが、自主閉鎖だった。問題を先送りにし改革がなかなか進まなかったルネサスが「シビアな経営判断を下せる自律した組織へと生まれ変わる兆しが見えた」(同)瞬間だった。

 交渉を先延ばしにするような動きをみせていたソニーは、予想外の展開に慌てた。本気を出したソニーは、ジャパンディスプレイ(JDI)の案件に携わったエース級のM&A(合併・買収)チームをルネサスの「鶴岡案件」に投入し、その後、スピーディーに交渉がまとまった。

 「あの収益事業を売るとは」―。子会社だったルネサスエスピードライバ(RSP)を、米シナプティクスに14年10月に売却した決断も業界に変化を印象付けた。中小型液晶パネル向け駆動ICを手がけるRSPは、米アップルを主要顧客に抱え、一定の利益を出す優良子会社だった。しかし中長期戦略に基づき、非中核事業との位置付けは変わらないと判断し切り出した。

 日立製作所、三菱電機、NECを母体とするルネサスエレクトロニクス。10年の発足後も親会社3社が約25―34%の株式を握り、各社の1事業部門のように運営されてきた。このため「ガバナンスが欠如した状態」(業界関係者)に陥り、製品群の絞り込みや工場の集約が進まず、赤字を垂れ流してきた。

再生請負人が見た「日本の現場力は世界一」
 ルネサスが生まれ変わった理由は何か。産革機構が実施したのは、約1383億円を出資し支配株主となり、コーポレートガバナンス(企業統治)を効かせるという「非常にシンプルなこと」(朝倉専務)だった。「その後は、社員自らがプランを策定し実行してくれたので、口を出す必要はなかった。日本企業の現場力は世界一だと感じた」と朝倉専務は振り返る。

 今後、ルネサスが成長軌道に移行するのは容易ではない。半導体業界では、市場の成熟化が進んだ結果、世界的な再編が加速している。ルネサスと車向け半導体でしのぎを削るオランダ・NXPセミコンダクターズが米フリースケールセミコンダクタを買収するなど、ライバルが規模拡大によって存在感を高めている。

 またスマートカー(近未来自動車)や、モノのインターネット(IoT)といった新領域では、半導体からアプリまでシステム構成が幅広いため、半導体だけを提供しても顧客ニーズには十分に応えられない。このためアプリケーション(応用ソフト)やサービスまで含めて提供するソリューション展開という新たな競争が始まっている。

 ルネサスがこれらの課題を乗り越えるためには、他社との効果的な提携戦略が欠かせない。24日付で就任した遠藤隆雄会長兼最高経営責任者(CEO)は、「弱い技術や市場を補完する足し算ができる会社がターゲット。プレーヤーが少なくなっているので焦りはあるが、慎重かつ大胆に提携戦略を進める」と意欲を示す。

 特に注目されるのは、インターネットに常時接続される“つながる車”や先進運転支援システム、自動運転を巡ってビジネスチャンスが急拡大する車分野だ。ルネサスは車向けマイコンで世界首位にあり、車関連企業への販路拡大を目指す企業を巻き込んでいける可能性はある。

 調査会社ガートナージャパンの山地正恒半導体/エレクトロニクス・グループ主席アナリストは、「ルネサスが自社の製品ラインアップを補完する目的で、自動運転の頭脳となる高機能プロセッサーや、センサー関連メーカーと組むメリットは大きいのではないか」と指摘する。


主要株主、自動車業界の意向が“出口戦略”を左右?
 ルネサスの提携戦略は、同社株式の69・15%を保有する産革機構の出口戦略とも密接に関係する。産革機構には政府が出資しているほか、トヨタ自動車やパナソニックなど有力な日本企業が顔をそろえている。「外資・内資という分け方で議論するのはナンセンス」(朝倉専務)ではあるものの、ルネサスが外資系と提携する場合、一筋縄でいかない可能性もある。今後、“日の丸半導体”をどのように自立させるのか。それは日本の車産業や産業機器産業の行く末にも関わってくる。

 産業革新機構が買収する前のルネサスや中小型液晶のJDIはコーポレートガバナンス問題企業だった。それが外部から経営者を送り込んで経済合理性に基づいて構造改革を“普通”に行い、数年でかたや初の当期黒字化、かたや上場を果たした。

 政府が月内にまとめる成長戦略「日本再興戦略」の1丁目1番地もまたコーポレートガバナンスの強化だ。12年末の安倍晋三政権発足以降、上場企業に対して社外取締役の導入を原則義務付け、株主資本利益率(ROE)の経営目標への採用を促して、企業経営に規律を働かせる仕組みを目指してきた。

政府の産業再生戦略、シャープは救済するのか
 日本企業も欧米のように株主からのプレッシャーが強まり、「いかに稼ぐ力を高めるか」が最優先の経営課題となる。両社が適切なガバナンス体制の下で成長への道筋を付けたことは、産業再生の新たな成功モデルと位置づけていいだろう。

 同じ電機業界では現在、不適切会計問題に揺れる東芝や経営再建中のシャープが“いつか来た道”を歩いている。ただ、昔と違って、今はコーポレートガバナンス問題企業への処方箋が存在する。

ルネサスCEOがわずか半年で突然の辞任。半導体再編が動きだす?

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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