【地方発ヒット商品の裏側】世界一予約の取れないレストランを唸らせた日本酒(4)

インバウンド・地域活性

発泡日本酒「MIZUBASHO PURE」
  • 発泡日本酒「MIZUBASHO PURE」
  • 永井酒造で代表取締役社長を務める永井則吉氏
  • 則吉氏が提案する「NAGAI STYLE」
  • 94年に完成した「水芭蕉蔵」。設備の近代化が進められている
  • 洗浄中の醸造タンク
  • 則吉氏のアイディアで完成した氷温タンク
  • 内部の温度がマイナスに保たれている
■群馬を愛し、愛される酒造り

 NAGAI STYLEで世界を見据えた酒造り(テロワールという概念)をする中で、則吉氏がずっと大切にしてきたことがある。それは群馬に軸を置いて、この地の自然に敬意を表した酒造りをするということ。お酒で群馬を元気にしたいという郷土愛は、今も昔も変わらない則吉氏のポリシーだ。

 永井酒造のある川場村には、全国米・食味分析鑑定コンクールで8年連続金賞を受賞した「雪ほたか」という米がある。これを原料として、15年に開発したのが「水芭蕉 雪ほたか 純米大吟醸」だ。

 新製品の開発は酒で川場村の自然を表現したいという願いもあったが、その先にイメージしたのはワイナリーにおけるドメーヌの存在だったという。栽培から醸造、瓶詰までを一貫して行う酒造り。それを日本酒でやるというのが、則吉氏が次に思い描いているビジョンだ。

「いつかは酒蔵から見渡す限りの田圃と契約して、一斉に田植え会をしてみたいですね。そこには、ぜひ海外からも観光客に遊びに来てもらいたい。ワイン通がボルドーの畑を訪ねるように、川場村に足を運ぶ。そんな未来が作れないかと考えています」

 村の田園風景を守りながら、この地の酒文化を発信すること。その一環として則吉氏が力を入れているのが、酒蔵ツーリズムという取り組みだ。地域にある4つの酒蔵、2つの地ビールメーカー、1つのワイナリーを回るツアーを計画し、既に旅行会社などとも話を進めているという。14年には蔵の敷地の一角に「蔵カフェ」をオープン。仕込み水を使ったコーヒー、酒クーヘンなどの酒スイーツを提供し、村の新たな観光拠点として人気を集めている。

■改革、日本酒の未来を切り開く
 則吉氏は13年に永井酒造の6代目経営者に就任した。これによって、今まで掲げてきた彼のビジョンは、より明確なものになったと話している。

 吟醸酒を中心とした酒造りに始まり、NAGAI STYLEに至るまでの約20年間で、永井酒造はその姿を大きく変えた。これらの改革はなぜ成功したのか? 則吉氏によると、そこには明確なリーダーシップがあったという。

「オーナーのビジョンが明確に決まれば、みんながそれを応援して、ついて来てくれます。そのためにも大切なのは理想とビジョンを共有することです。世界戦略、ブランド像、群馬県に愛される酒造り……。社員や販売店を含めて、意識改革にはかなり力を入れました。ここ数年の成功の裏側には、間違いなくこの取り組みがあったと思います」

 NAGAI STYLEの完成を経て、則吉氏のビジョンはさらに進化した。世界に通じる日本酒を目指して、則吉氏と永井酒造による日本酒のイノベーションは今も続いている。(おわり)

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《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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