【地方発ヒット商品の裏側】世界一予約の取れないレストランを唸らせた日本酒(3)

インバウンド・地域活性

発泡日本酒「MIZUBASHO PURE」
  • 発泡日本酒「MIZUBASHO PURE」
  • 永井酒造で代表取締役社長を務める永井則吉氏
  • 則吉氏が提案する「NAGAI STYLE」
  • 94年に完成した「水芭蕉蔵」。設備の近代化が進められている
  • 洗浄中の醸造タンク
  • 則吉氏のアイディアで完成した氷温タンク
  • 内部の温度がマイナスに保たれている
 則吉氏は独学で日本酒の瓶内二次発酵に成功した。そして、シャンパンに近づけるため、目標とする瓶内のガス気圧を5気圧としたのだが、何度試しても瓶内の気圧が上がらない。さらに、澱を引く作業も上手くいかず、理想とする透明度には遠い仕上がりだった。

 日本酒は一度封栓をしたら、何かを後で加えることができない。その時点でリキュールになってしまうため、仕込みの段階で方向性を決める必要があった。そのため、則吉氏は3年間をかけて、500通りの配合を試したという。それでも、目指すべき発泡日本酒はできなかった。

「それで、もう諦めようかと思ったときに、最後に試してみたいことがありました。本場シャンパーニュに行って、実際に製造の現場を見てみようと決意したんです」

 06年、則吉氏は渡仏し、ワイナリーで数か月に渡って研修を受ける。なぜ、シャンパンは瓶内二次発酵で、高いガス気圧を含んでいるのか? 理由は気づいてしまえば、ごく簡単なところに隠されていた。

 それまで、則吉氏は日本酒と同じ酒蔵に、仕込んだ酒を寝かせていた。しかし、ワイナリーにおける貯蔵庫の温度は、日本の酒蔵よりも高い。それは当たり前すぎるため、則吉氏が調べた本には書かれていなかった。さらに、澱の引き方についても現場で実演をしてもらい、それを元に帰国後に改良を施す。

 そして08年、ついに発泡日本酒「MIZUBASHO PURE」は完成した。その年のうちに、則吉氏はすぐに海外へと飛ぶ。ターゲットはミシュランの星を持つレストラン。世界が認めるシェフたちに、完成した発泡日本酒の味を試してもらいたかったのだ。

「『今まで飲んできた日本酒の中でも、こんなのは初めてだよ』。そう皆さんに言ってもらえたのが、本当に嬉しかったですね。それこそ、まさに僕が狙っていた反応でした」

 その後、MIZUBASHO PUREは世界に名だたるレストランへと、次々に納品されていく。09年には“世界一予約が取れない”とされる「エル・ブリ」からもオファーがあった。現在では日本の在外公館の日本酒リストにも、その名が載せられている。

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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