【展望2016・上】収益基盤安定に注力するゼネコン各社、具体指針は? 画像 【展望2016・上】収益基盤安定に注力するゼネコン各社、具体指針は?

マネジメント

 ◇試される「現場力」
 建設投資が堅調に推移した2015年。ゼネコン各社は採算重視の受注活動を一段と徹底。手持ちの不採算工事もなくなり、利益を大きく伸ばした企業も多い。16年も市場は引き続き底堅く推移するとみられているが、労務需給や資材価格の動向など懸念材料もある。各社は回復基調の利益を安定的に伸ばす取り組みや、収益基盤を多様化・強化する施策に力を注ぐことになりそうだ。各社トップへのインタビューから業界の16年を展望した。
 「受注環境は追い風にある」と話すのは村田誉之大成建設社長。各社トップは2020年東京五輪までは市場は堅調に推移するとの認識でほぼ一致する。五輪後にもまたがる長期プロジェクトや、五輪後に先送りとなるプロジェクトもあり、五輪後の市場も「悲観していない」との声も出始めている。
 来年には新国立競技場の建設工事が始まる予定で、これを皮切りに五輪関連施設の整備が本格始動するとみられる。五輪に向けた工事ラッシュで首都圏を中心に労務費の再高騰を懸念する声もあり、底上げされた利益水準の維持が各社共通の課題になりそうだ。
 利益の安定的な確保・拡大に向け、連結経営を重視する動きも強まってきた。来年、橋梁・鉄骨事業を手掛ける連結子会社2社を経営統合する清水建設の宮本洋一社長は「社会が連結決算を重視している。グループ全体で相乗効果を引き出すため、統廃合を常に視野に入れ、効率的な経営を目指す。各社には清水以外の仕事を増やしてほしい。外部から収益を挙げ、連結に寄与させる」と語る。
 三井住友建設の新井英雄社長も「グループ会社には人材や技術など多彩な資源がある。建設分野を中心に連携を強め、連結での業績を拡大したい」と意欲を見せる。これまで単体経営に重点を置いていた佐藤工業の宮本雅文社長も、今後は連結ベースの経営に軸足を移す考えを明らかにした。
 「まちづくり」を事業領域に据える竹中工務店はグループ企業との連携強化に乗りだす。宮下正裕社長は「プロジェクト連携だけでなく、まちづくりの課題を共有して解決する。グループ全体で社会価値を創造していく」と新たな目標を掲げた。
 4月に経営企画本部にグループ戦略推進室を設置し、グループ全体の成長戦略に取り組む熊谷組の樋口靖社長は「建築のリニューアルなどグループ会社が手掛ける市場が今後大きくなれば、本体からそちらに人や金を移動する必要がある。今から訓練しておく」と話し、本体や子会社間の人的交流や連携した技術開発を強める考えを示す。
 大和ハウス工業グループでは、フジタと大和小田急建設が10月に合併した。フジタの奥村洋治社長は「互いの強みを残し、それぞれの高いレベルに全体を合わせていく」との方針を打ち出した。
 各社は特色ある事業や独自の技術を持つグループ会社と、人的な異動・交流にとどまらず、技術の相互活用なども進めていく考えだ。こうした取り組みを通じ、付加価値の高い事業や技術、新規事業などを模索。収益源の幅を広げるとともに、グループ各社の収益力を高めようとしている。
 大林組は、15~17年度のグループ中期経営計画で、建築、土木、開発の主力3事業に加え、新たな収益源を創出する「新領域事業」を第4の柱に据え、収益基盤の多様化を推進する方針を明確にした。白石達社長は「太陽光に続く新たな再生可能エネルギー発電事業として風力、バイオマス、地熱発電などが本格化する。今後のキーワードは農業と水素だ」と見通しを語る。
 工事請負だけではなく、事業主体に参画することで利益を上げる「脱請負」の取り組みを推進するのは前田建設。小原好一社長は「仙台空港のコンセッション(公共施設等運営権)事業を獲得できたのは一番の成果」とし、他の空港や下水道、有料道路などのコンセッション事業参画にも積極姿勢を見せる。
 15年は免震ゴム性能偽装や杭工事データ流用など、建築物の品質を揺るがす問題が発生した。あるトップは「ものづくりの現場へのゼネコン社員の関与が減ってきている」と指摘。「技術の進歩と引き替えに失ったものもある」と問題を投げ掛けるトップもいる。
 プロセスを重視した新しい生産のあり方を模索する動きも出てきた。品質は各社ひいては業界全体の信頼に直結する。16年は「現場力」が試される1年にもなりそうだ。

展望2016・上/ゼネコン、収益基盤安定に注力/グループ経営加速へ

《日刊建設工業新聞》

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