「ロボットは人の労働を奪う」という脅し文句は本当? 画像 「ロボットは人の労働を奪う」という脅し文句は本当?

インバウンド・地域活性

 ロボット、人工知能は、人の労働を奪う悪として捉えられる場合がある。実は、産業用ロボットの登場、あるいは、汎用パソコンからPCに至るまで、時代時代で新技術が登場するたびに「人の労働を奪う」という脅し文句が使われてきた。その歴史も検証していく必要性はないだろうか。

 産業用ロボットを例にとれば、米国初の産業用ロボットであったが、その米国では労働を奪うという労働組合の主張により普及しなかった。一方で、日本では人の安全性を確保したり、生産性をより向上させたりするためにロボットを使うことにかじをきった。

 この結果、ロボットの稼働台数、生産台数で常に一番を誇るまでになった。こう考えてみると、最初にコンセプト、アイデアが生まれることも大切だが、使ってみることにより、ハードウエアの進化を促すことは一層重要であることがわかる。

 新しい技術が生まれてくる場合、現在よりも安全リスクが許容できるほどであれば、その技術は使ってみて、社会に実装していくことが望ましい。

豚もも部位自動除骨ロボット、「ブッチャー」との違い問い続けた好例
 ロボット大賞の受賞歴もある前川電気の豚もも部位自動除骨ロボットの「ハムダスR」は、ロボット技術をどのように既存のラインをうまく変えていき、ロボット技術も踏まえたうえで再設計していくことができるかを、自ら問い続け実現した好例である。

 肉加工の場にはブッチャーといわれる職人が存在し、肉処理の前に、肉をできるだけ多く残しながら、骨を取り除くという作業が必要となる。この肉のはぎ方が職人技となるのだが、そもそも、人の構造とロボットの構造も異なるので、力の入れ方も異なる。

 こうした場合、より良い肉のはぎ方は何かというコンセプトのもとで、工程の再設計が必要となる。食品工場へエンジニアを派遣し、もともとの人が行う工程の理解から始めたのが、品質の安定、生産性の向上につながる成功の要因であろう。

 別の例を示そう。ある生産設備が普及する年代があった。以前は手作業であったものが、中小企業の親子での代替わりなどを通じて、自動化投資へかじを切るといったことが積極的に行われた時代背景があった。現在に捉えなおしてみると、再び、ロボットを導入しようという代替わり、あるいは、新しい形の労働形態へ変容するための投資を始める時期に差し掛かっている。

ロボットをはじめとする新技術を取り入れるには、時代背景と産業構造の変容が起因する。日本にはその現場があり、躍動できる環境が整いつつある。
 三治信一朗(さんじ・しんいちろう)NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー

「ロボットは人の労働を奪う」ーこの脅し文句には検証が必要

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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