グーグルのロボット開発、グーグルX傘下で戦略練り直しへ 画像 グーグルのロボット開発、グーグルX傘下で戦略練り直しへ

海外進出

 あれから2年、グーグルのロボット開発プロジェクトが産みの苦しみに直面している。2013年12月には東京大学発ベンチャーのシャフト(SCHAFT)や、不整地でも難なく走行できる四足歩行ロボットを開発する米ボストンダイナミクスなどベンチャー8社を一気に買収し、大きな話題となった。ところが今、内部でコードネーム「レプリカント」と呼ばれるプロジェクトの方向性が定まらず、求心力が失われているというのだ。

 グーグルは今年に入って、持ち株会社アルファベットを設立するなど事業構造改革に乗り出している。その一環としてロボットプロジェクトも、自動運転車や人工ニューロンネットワークのように一見、荒唐無稽なテーマの秘密研究を行うグーグルXに移管すると、ビジネスインサイダーなどが報じた。グーグルXはアルファベットの子会社に位置付けられた独立組織で、グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン氏がCEOを務める。

 これまでロボット部門もアルファベットの独立子会社になるのではとの見方もあったが、単独で事業収益を上げられる準備がまだ整っていないと上層部が判断したようだ。それよりも、困難な課題に挑戦する「ムーンショット」(月ロケットの打ち上げ)を掲げるグーグルXの下でプロジェクトを進めたほうが、野心的な目標に焦点を絞りやすいとの見方もある。同じタイミングで、昨年買収した太陽電池駆動ドローン開発のタイタン・エアロスペースもグーグルXに移す。

 ロボット開発プロジェクトが迷走した一番の理由は、プロジェクトを統括していた上級副社長のアンディー・ルービン氏が2014年10月末に退社したため。彼はスマートフォン用のアンドロイドOSを作り上げたことから「アンドロイドの父」とも呼ばれる。ロボットベンチャーの一連の買収も、ルービン氏の意向で行われた。[http://recode.net/2015/12/18/googles-scattershot-robotics-division-titan-drones-are-moving-into-google-x/{ハイテク情報サイトのre/code}]によれば、彼の退社後、ルービン氏を信奉する中堅幹部7人がグーグルを後にしたという。

 未来に向けたロボット開発を強力に牽引するルービン氏という「カリスマ」が去ったことで、研究開発の方向性や買収企業の社員の求心力が失われ、相乗効果が発揮しにくい状況になったようだ。買収先の持つ個別の技術があまりにバラバラのため、ルービン氏の退社後、それらをどうやって結びつけたらいいか誰にもわからなかったと、ビジネスインサイダーは書いている。

 裏返せば、再生の鍵となるのはカリスマリーダーの存在と言える。[https://www.theinformation.com/the-problem-with-alphabet{別の情報サイトのThe Information}]が11月22日に伝えたところでは、グーグルの共同創業者で持ち株会社アルファベットのラリー・ペイジCEOが、「AutoCAD」で知られる米オートデスクのカール・バスCEOをヘッドハントし、ロボット部門のトップに据えようとしたが、交渉は失敗に終わったという。引き続き、後任を探しているものの、ロボットの専門知識と研究開発の経験があり、ビジネスに通じていて、かつ大胆なビジョンを持った幹部人材を口説き落とすのは容易ではない。

 グーグルは詳細を明らかにしていないが、先のre/codeによれば、「レプリカント」という開発プロジェクトではもともと、ロボットの基盤となるソフトウエアと複雑な機構とを組み合わせることで、ロボットによる人間の動きの再現を目的にしているという。ルービン氏が2014年に会社を去る際にロボットチームに宛てたメールでは、2020年前に消費者向けのロボット技術を実用化するのが大きな目標だったようだ。ただ、ロボット部門がグーグルXに入ることで、こうした目標設定や完成時期が変更になる可能性も大いにある。

 ちなみに、レプリカントとは映画『ブレードランナー』に登場するアンドロイドの呼び名。グーグルが自社で設計・開発したスマートフォンとタブレットの「ネクサス(Nexus)シリーズ」も、『ブレードランナー』でのレプリカントの製品名「ネクサス6」に由来する。

 一方、ルービン氏は独カールツァイスのロボットエンジニアとしてキャリアをスタート。モバイル機器のOS開発を目的に共同創業したアンドロイド社が2005年にグーグルに買収されたことから、グーグルに移り、アンドロイド部門の上級副社長になった。インテリジェントマシン(知能化機械)の実現に情熱を燃やし、社名やOSにまで「アンドロイド」を付けるほどのロボット好き。ペイジCEOもロボットが好きだという。

 ルービン氏はグーグルを2014年に退社した直後、ハードウエアスタートアップのインキュベーター、プレイグラウンド・グローバル(Playground Global)を設立。2015年に入ってベンチャー投資会社レッドポイント・ベンチャーズのパートナーに加わっている。

迷走気味のグーグル・ロボット開発プロジェクト、グーグルX傘下で戦略練り直しへ

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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