実証やコスト算出が光る事業案…沖縄の高校生科学コンテスト 画像 実証やコスト算出が光る事業案…沖縄の高校生科学コンテスト

インバウンド・地域活性

 沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で12月12日に実施された、高校生による起業プランコンテスト「SCORE!(スコア)」。県内の高校、工業高専の10校から14チームがエントリー。科学分野の研究をベースにした事業化プランを披露した。沖縄の地域性をユニークな若い感性で捉え、さらに実証で裏付けたプレゼンテーションは見応え十分だった。

 SCORE!は正式名称を「サイエンスin沖縄 起業のための研究能力」といい、在沖米国総領事館とOISTが主催、今回で4年目になる。英語力を高める目的も担い、発表言語は日本語か英語だ。生徒らが英語を使うのは1位の副賞とも関係がある。1位チームには米国研修とともに、ユナイテッド航空とANAから往復航空券が贈られるためだ。

 昨年1位を獲得した名護高校チームの報告も行われたが、スタンフォード大やカリフォルニア大バークレー校などを視察し、大いに刺激を受けた様子だった。各チームはこの1位を目指してプレゼンに臨んだ。

地域の資源と課題テーマ
 出場チームがテーマに選んだのは、紅芋や海ブドウ、ガジュマルといった沖縄の特産物や自生植物、生物を活用するものが目立った。水生昆虫のトビケラの生態調査から完全養殖法にたどりついたのは辺土名高校。食糧危機の観点からおいしく食べる手法の開発と、特産品化の提案へ飛躍していく発表は会場の興味をひいた。

 球陽高校は螺鈿(らでん)細工に、未利用資源のカンギク貝の殻を使い、身は食品として利用するなど地元の経済振興につなげるプランを披露。北部農林高校はサトウキビをしぼった後の廃糖蜜から、天然酵母でバイオエタノールを製造する研究を発表。廃棄物利用とエネルギー問題解決の視点、さらに独自の酵母を使った点が興味深かった。

 工学分野では色素増感型太陽電池とステンドグラスを組み合わせた発電システムを球陽高校が開発。八重山高校は鉛蓄電池の可能性を再発見する試みをした。一風変わったところでは、首里東高校による日替わりクイズで科学への興味を高めるカレンダー。アイデアだけでなく校内で“使用前、使用後”を実証して効果を示した。

 いずれも観客を引き込むのはテーマのユニークさに加えて、机上の理論と仮説で終わらないためだ。仮説を基に実験し、さらに校内外で実証し考察する。PDCAサイクルをきっちり回した提案ほど研究上の「気づき」を盛り込んでおり、苦労の跡も見えて観客としては興味深かった。

 参加校の指導教諭が「起業という目標が明確にあるため、研究の方向を導きやすい」と話すように、事業化を目指すというハードルが現実味を持たせている。各チームは事業化した際の原価や市場の実勢価格を考慮した上での値付けを検討し、売り上げ見込みも示していた。

「答えがないから科学が好き」
 今回、1位に輝いたのは球陽高校の天久飛向さん、金城沙代さん、比嘉梨七さんの高校2年生チーム。沖縄特産の海藻・海ブドウの効果的養殖法の研究を、「マネジャー」の上地茉那さんと4人で1年半かけて取り組んだ。養殖業者の協力も得て、生育中に気泡を触れさせることで成長を促し、水槽への液肥添加で生産量が増すことを実証。水温や光の当て方など、実用的な研究が評価された。

 チームリーダーの天久さんは「海ブドウを食べるのが好きでテーマに選んだ。粒を数えるのが大変だった」と無邪気に答える一方、「研究を続けて後輩に引き継ぐ。答えがないから科学が好き。いつかOISTで研究をしたい」と力強く話した。

 また2位の八重山高校はマングローブ林に生息するカニ「ノコギリガザミ」の生態を調べた。生息数は減少しているが、実は食べるとおいしいということから、過去に種苗生産していたことなどにもたどりつき、養殖の可能性を探った。

 3位は名護高校。地域の自然と観光振興を結びつけるスマホアプリの開発だった。実際の製品開発までは至らなかったが、AR(拡張現実)など最新技術と、スタンプラリーなど商業的視点を取り入れたアイデアには、審査員のIT企業経営者に「実用化するなら応援したい」と言わしめた。

若者のジャンプ台に
 SCORE!を見る限り、若い世代の科学離れは杞憂かも知れないと思える。また地域資源の活用によるまちおこしや廃棄物の再利用など、地域に対する問題意識を持っていることも頼もしい限りだ。

 一方で英語と科学技術、起業という組み合わせは、これからの日本人により求められる部分。一部のエリートを伸ばすだけでなく、ボリュームゾーンの拡大も不可欠だ。特に沖縄は今後人口が自然増する中で、人材面で日本をリードしていく役割にならなければいけない。そのためには教育機関だけでなく、行政、企業、地域ももっと積極的に関わる必要がある。

 その点でSCORE!に関して言えば、工業高校などより幅広い生徒のエントリーにつながると、さらに大会の意義も深くなるはずだ。これからも続けていってもらうとともに、より多くの若者たちが将来の活躍に向けて、大きくジャンプできる大会になってほしい。

入賞校と発表テーマは次の通り。
 ▽1位=球陽高校「効率の良い海ブドウ養殖の方法について」
 ▽2位=八重山高校=「アンパルにおけるノコギリガザミの季節変化」
 ▽3位=名護高校「沖縄、あの場所、このアプリ!~沖縄県観光振興のための北部自然地域活用の一提案~」
 ▽4位=辺土名高校「亜熱帯島嶼(とうしょ)における水生昆虫の生活史と食用昆虫の完全養殖への挑戦」
 ▽5位=球陽高校「薄貝加工品のモデルとしてのヤコウガイの物理化学的解析」
 ▽6位=首里東高校「科学への興味・関心と探究心を深めるための実践~サイエンス・カレンダーの活用を通して~」
 このほか、エントリーした学校は次の通り(発表順)。
 ▽読谷高校▽北部農林高校▽浦添高校▽中部農林高校▽沖縄工業高専

沖縄の高校生科学コンテスト「SCORE!」がおもしろい

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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