女性の強さを思い知る、50キロのトレイルラン、記者が体験(6) 画像 女性の強さを思い知る、50キロのトレイルラン、記者が体験(6)

インバウンド・地域活性

 スポンサー企業の社員として参加した「Fun Trails 100K&50K」の初開催から3週間。埼玉県秩父市、飯能市などを会場に、未舗装の山道を走るレースだ。

 ひょんなところで同じ大会に参加した人と出会うことができた。トライアスロンに打ち込みつつも最近はトレイルランの大会ばかりに出場しているという彼は、今回の大会を絶賛。「もう来年はすぐに定員がうまるのとちゃいますか」。東京在住ながら関西まじりで語る。

 参加者は北海道から熊本まで全国に渡る。それどころか名簿を見る限り、海外からの参加者もいる。東京・池袋で電車に乗って1時間前後でスタート地点そばに着く。全国を見ると、これほど交通のいい大会はあまりないらしい。多くの人が集まる理由の一つはここにありそうだ。

 残すところ40キロ。今度の下りはきつい上に長い。距離にして5キロほど、高度にして700メートルほどを一気に下る。踏み固められた道もあるにはあるが、V字状に切れ込んだ溝の底にハンドボールほどの大きさの石が転がり、その上を晩秋の落ち葉が覆う。見えない石をいつ踏み外し、捻挫するか分からない。石の表面は湿り気をたっぷり帯び、舗装路用の靴を履いた筆者を転倒へと誘う。溝の底を避け、無理やり斜面に靴底を押し当てて下る筆者の歩みは恐ろしいほど遅い。

 そんな中、続々と選手が後に迫る。狭い山道では途中で追い抜くことは難しい。場所があれば足を止め、後に続く選手に道を譲る。

 勢いよく走って下る選手の中には、女性の姿も目立つ。参加者全体の2割ほどを女性が占める。長距離を競うスポーツは女性にとって有利な面があると言われる。最終盤に入り、女性陣の勢いはさらに増しているようにも思える。

 道を譲って駆け下りる選手の列を見送ると、しばらくの間は1人だけの静かな時間が訪れる。ここで転んで頭を打ったらどうなるだろう。救急車はもちろん、ヘリコプターでの救出さえも無理ではないか。専用シューズの機能を知らずにこの難所に臨み、もうトレイルランはこれで最後にしようとまで考え始めた。

 また駆け下りてくる選手たち。「もうゆっくりにしましょう。10時間でのゴールは確実だから」。そんな女性同士の会話が耳に入ってきた。背中を見ながら、目標にしていた10時間でのゴールは難しくなりつつあることを知る。

 どれほど時間が過ぎたことだろう。山の中は既に薄暗い。持参を義務付けられたライトを使うほどではないが、秋の太陽が沈む速度は速い。いよいよ、この日のために購入したヘッドライトを使うことになるのか。

 そう思い始めたころ傾斜がゆるくなり、枝の間から民家が見え始めた。もう少しで舗装路だ。最後の力を振り絞って10時間を目指そう。

 これまで、筆者は「50キロの部」に参加していると書いてきたが、正確には「50キロ」ではなく「56キロ」。舗装路に出てからゴールまでがちょうど6キロ。恐怖の下りを終えて勢いよく走り始めたがその勢いはすぐに途絶えた。この6キロが長かったのである。
日本教育新聞

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