【地方発ヒット商品の裏側】海外アパレルも注目する世界一薄いシルク「フェアリー・フェザー」
インバウンド・地域活性
こうして、世界一細い先染めの繭糸を手にした齋栄織物。だが、その細さは当初の予想以上に、現場のベテラン職人をてこずらせた。撚糸によって糸の強度は確かに増している。だが、そのまま織り機にかけただけでは、何度試しても織る端から糸が切れていった。
そんな彼らはこの後、かつてない苦難に襲われることになる。11年3月、東日本大震災発生。停電の影響でブレーカーが壊れ、建物自体にも大きなダメージが入った。
「重さ2トンある一番大きな織り機が動いて壊れるぐらいの、大きな揺れでしたから。結局は建屋を全て改修することになりました。ただ、織り機のほとんどはボルトで固定されていたので、無事だったのが幸いでしたね。社員もすぐに駆けつけてくれたので、震災の1週間後には全ての機械を稼働させられたんです」
この年、齋栄織物は納品を1件も遅らせることなく、受注していた全てのオーダーに対応した。さらに、三眠蚕を用いた織物の開発にも、ようやく目処がたってくる。
糸切れが起きる原因として考えられるのは、糸にかけるテンションと、糸を織りあげるときに発生する摩擦。このうちテンション管理については、機械を調整することで何とか解決できた。しかし、織りの工程では糸を上下させる必要があるため、どうしても摩擦が発生してしまう。
「ならば、その動く幅を狭めればいいだろうと。糸が交差するギリギリのところを、クリップのように抑えるよう、機械を改良しました。これでようやく糸を切らすことなく、生地を織り上げることに成功したんです」
2011年9月、ついに世界一薄く、軽い先染めシルクが完成する。今までにない透け方と、薄さならではの質感。それを見た齋藤氏は、生地に「フェアリー・フェザー(妖精の羽)」と名を付けた。
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