張トヨタ名誉会長が製造業に伝えたいこと 画像 張トヨタ名誉会長が製造業に伝えたいこと

マネジメント

◆「欧米に3年で追いつこう」から始まったトヨタ生産方式

トヨタ自動車とそのグループ企業や取引先による品質活動である「オールトヨタTQM大会」が12月1日に名古屋市で開かれ、50回目を記念してトヨタの張富士夫名誉会長が講演した。張名誉会長は、トヨタ生産方式(TPS)を確立した大野耐一・元副社長から直接指導を受けた最後の世代でもあり、今年の同大会テーマ「伝承と変革」に沿って、TPSの本質などを約4300人の出席者に語りかけた。講演内容は、単に1企業グループに留まらず、製造業にとっての普遍的価値観ともいえ、論旨を紹介したい。


「なぜTPSはできたか」

TPSは1945年の終戦時から30年くらいで作り上げたのだが、そもそもは同年に豊田喜一郎さんが「3年で欧米に追いつこう」と言ったことによる。しかし、設備はない、カネもない、技術もないのないない尽くしだったという。そこで、考えあぐねて皆で現場に行ってみると、ムダは沢山あった。そこからムダを省いて生産性を上げようという考え方が生まれた。私が大野さんの部下になったのは、それからおよそ20年後だが、最初に教えられたのはムダの話だった。現場には「仕事」(=やらなきゃならないこと)と、「ムダ」(=やってはいけないこと)の2つしかないということだったが、私には最初は、全部「仕事」にしか見えなかった。


◆悪いものは絶対、後工程に流さない

「ジャストインタイムと自働化」

TPSは、「ジャストインタイムと」と「自働化」の2本の柱で形ができていったわけだが、戦後間もないころは部品が集まらないこともあって月末集中生産という状況だった。喜一郎さんが(1937年に)会社を作った時(部品供給は)、「ジャストインタイムでやろう」と言っておられたのだが、これを大野さんは「後ろの工程の人が要る時に、要るものを取りに行く」という仕組みを「カンバン方式」でやるようにして形にした。

もうひとつの「自働化」は、佐吉翁の「G型自動織機」でタテ糸が1本切れても自動停止するという画期的な発明が源流。人偏(ニンベン)が付いて機械が自分で判断して「働く」という思想、同時に問題があれば直ちにラインを止めるという思想であり、これをすべてのラインに入れていった。品質は「100%良品」というのが大前提であり、悪いものは絶対、後工程に流さないということだ。1973年ごろに、上司から「TPSは広がってきたが、徒弟制度みたいにやっていて分かりにくい。理論化してみんなが参加できるようにしなさい」という指示があり、(体系化に)取り組まさせていただいた。


◆5回の「ナゼ?」で見えてくるもの

「利益=売り値-原価」

われわれがTPSでやってきたことは、ムダを省いて原価低減するということ。考え方は「利益=売り値-原価」であり、原価が高いと利益は減ってしまう。世の中には原価に適正利潤を乗せて売るという企業やビジネスもある。つまり「売り値=原価+利益」ということで、一見、似ているが考え方は全く異なる。われわれ製造の人は、原価を下げて利益を出していかねばならない。先輩たちから経営者の心構えとしてよく言われたのは、現場で働いている人たちの給料袋を、(紙幣)1枚でも2枚でも厚くするということだった。みんなで努力して給料袋が厚くなるようにするということは、私には大変大きな教えになった。


「原因と真因、ナゼを5回」

TPSはムダにひとつひとつ対処することで、大きな仕組みになっている。とくに若い人に申し上げたいのは、ムダを見つけて「ナゼ、ナゼ」と5回繰り返すことをやっていただきたい。1回だけの「ナゼ」で手を打ったら、それは「原因」に対して手を打ったということ。「ナゼ」を5回やると真の原因、つまり「真因」が分かってくる。

現場はしょっちゅう変化している。新しい製品もどんどん出てくるし、人も設備も新しくなっていくので、常に「ナゼだ、ナゼだ」とムダを見つけることがすごく大事になる。大野さんもよく「TPSに完成はない」とおっしゃっていた。これを是非、伝承していただきたい。

【池原照雄の単眼複眼】製造業に伝承したいこと…張トヨタ名誉会長の講演から

《池原照雄》

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