農作業のヒヤリ・ハットを疑似体験、富山の農家が独自施設 画像 農作業のヒヤリ・ハットを疑似体験、富山の農家が独自施設

インバウンド・地域活性

 企業対象に労働災害の予防などを指導する労働安全コンサルタントで、富山県南砺市の兼業農家・片山昌作さん(55)は、ヒヤリ・ハットなどの農作業事故を疑似体験できる施設整備を進めている。工作機械メーカーの元エンジニアだった経験を生かし、悲惨な事故を一件でも減らすのが目的。事故の疑似体験ができる施設は、農水省農林水産研修所(茨城県つくば市)があるが、「個人で体験施設を運営するのは極めて珍しい」(同省)という。来春の開業を目指す。

・転落や横転・・・メニュー多彩 「保護具も大切」 

 体験施設の規模は200平方メートルで鉄骨1階建ての倉庫を借り、約800万円掛けて整備を進めている。高所作業を想定した穀物乾燥機からの転落や、傾斜地でコンバインの収穫作業中の横転など、体験メニューは多彩だ。高所からの転落体験は恐怖を味わうだけでなく、建設業などで使われている複数の安全帯を試し、特徴と安全性を知ってもらうことで事故防止につなげる。

 こうした施設を運営しようと思ったきっかけは2014年、片山さんが南砺市の農業委員に就任したこと。地元農家から農作業中に起きた悲惨な死亡事故の話を聞き、心を痛めたからだ。「高所からの転倒や用水路への転落など、周辺地域も含めて年に数件は死亡事故の話を聞いている」と片山さん。どのケースも、耳をふさぎたくなるようなつらい話だった。

 片山さんは以前、エンジニアとして自動車メーカーのライン立ち上げにも関わってきた。製造業であればヘルメットなどの保護具の着用は当たり前だったが、農業はまるで違っていた。

 農水省の調べでは10万人当たりの死亡事故発生件数は農業で14.6(13年度)。かつて“きつい・汚い・危険”の3K職場と言われていた建設業は6.9(同)と倍の開きが付いた。個人経営の農家は、労働基準法や労働安全衛生法のような命を守る法律もない。「自分の経験や知識を農作業安全のために役立てられないか」。7月から施設整備に取りかかった。

 地元のJAとなみ野も歓迎する。「このような施設があれば、一人でも多くの命が救える。農家にとってプラスになる」(営農購買課)と評価する。

 片山さんは「農作業がいかに危険にさらされているか、疑似体験を通して気付いてもらいたい。作業前に安全帯などの保護具を着用することが日常化されれば、死亡事故が減るのではないか」と開業に向けて期待を込める。(前田大介)

農作業の危険性 身をもって知ろう ヒヤリ・ハット疑似体験を 来春に富山県の農家が独自施設

《日本農業新聞「e農net」》

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