アイディア生むのは経験…「沖縄海洋ロボコン」(後編) 画像 アイディア生むのは経験…「沖縄海洋ロボコン」(後編)

インバウンド・地域活性

 11月22日に開かれた「第1回沖縄海洋ロボットコンテスト」は、国際的にもめずらしい海で競技を行う大会。朝から昼にかけて実施されたROV(遠隔操作型無人探査機)部門は自然の難しさによる波乱含みだったが、劇的な展開となった。[http://newswitch.jp/p/2758{〈前編〉波乱のROV部門}]

 そしてAUV(自律型無人探査機)部門が始まった。ルールは基本的に、10分間でスタートからゴールのブイまで直線距離で40メートルの海中を進むこと。その間には四つのブイがランダムな間隔で浮かんでおり、これらのブイを通過したり、航行中に方向転換したり、航行後に浮上することでも加点される。

 有線・無線で操作するROVと違い、AUVは自律型のため、海に投入後はロボットに任せるしかない。ただ競技者が依頼すれば、ダイバーにスタート地点まで運んでもらい、再スタートすることは認められる。

 エントリーしたのは西日本工業大学、日本文理大学・九州工業大学、沖縄職業能力開発大学校、九州職業能力開発大学校の4チーム。しかしスタート直前に、九州能開大チームの出場キャンセルがアナウンスされる。超音波ソナーを備え、イルカの学名「トゥルシオプス」を冠した機体だったが、機械トラブルで泳ぐ姿は見られなかった。

AUV部門は三つ巴に
 競技は3者の争いとなった。第1走者は西日本工大「幸村(ゆきむら)」。チーム代表は真田さんだ。一人で抱えられる小型設計にスラスター(推進装置)四つを載せる。プロペラは3次元CADで設計し、3次元プリンタで出力。回路も自主設計したという。

 スタート地点に着水し競技開始。走り出しはスムーズだったものの、潮に流されたのかすぐに右方向に旋回してしまう。そのためダイバーに回収してもらい再スタート。しかし同様に右へ。駆動系に問題はなさそうで、走りはするが前に進まない。そして4度目のスタート後、方位センサーに異常がありそうだとして途中棄権となった。

 次は日本文理大・九州工大チームの「OCTA」。メタリックピンクをした円筒状の機体下部に黒いフレームを持ち、上下、前後、左右の各方向に合わせて五つのスラスターが付く。耐圧深度50メートルの高スペックで臨んだ。

 着水後は前にぐんぐんと進んでいく。ところが前進はするものの海中に沈んでいかず、常に機体上部が少し海面から覗く状態が続く。

 そこでチームは再スタートを決断。一度陸揚げし、前後に付けた発泡材の浮きを一つ取り外すことで浮力を弱めて再投入する。だが今度は前後のバランスが悪くなり、進みづらくなった。再度回収し、残り時間3分10秒で前後の浮きを付け替える。だが、スタート後に駆動しなくなりこちらも棄権を選んだ。

「いたずらっ子」世にはばかる!?
 2チームが途中棄権し、ROVと同じくまたも最終チームに期待がかかる展開に。AUVでも最後に登場したのは、ROVと同様にくしくも沖縄能開大チームとなった。前年に最優秀賞を獲得しており2連覇がかかる。


 沖縄能開大の機体は、先輩の設計を参考に透明のアクリル製筐体(きょうたい)を採用したものの、カメラを二つに増やしてステレオビジョン化。一方でスラスターは前年の四つから二つに減らし、角度可変式で潜行と航行の二役をこなすなど新設計だ。

 スタート直後からあっという間に潜行し、姿は見えなくなった。本部や客席から位置を確認できないため、ダイバーがロボットに合わせて泳ぐことに。順調にジグザク走行し、方向転換の得点や通過点を稼いでいく。

 そして併走するダイバーはついにゴールへ到達。会場は一瞬盛り上がるも、機体は浮き上がってこず、ゴールを過ぎたまま砂浜の方に直進を続ける。このまま進むと座礁する恐れもある。心配する会場をよそに、スタート地点で見守っていたチームメンバーは自信たっぷりだった。「このあとゴールまで戻ってきて浮きます!」。

 その言葉通り、機体は方向を変えてゴール地点へ再び向かい始める。会場全体が固唾(かたず)を飲んで見守るなか、プカリとロボットが浮いた。その瞬間、会場は歓喜に沸き、メンバーらはハイタッチで喜びを分かち合った。沖縄の言葉でいたずらっ子を意味する「やなわらばー号」は、凱旋(がいせん)航行まで成し遂げて、最優秀賞に輝いた。

「経験がアイデアを生む」
 AUV部門に先立って行われたフリースタイル部門には、ジュニアテッククラブ玉城(たまぐすく)チームが「ウミガメロボ」でエントリー。今回唯一の小学生による参加だ。形状は小ぶりのウミガメそのもので、波にたゆたう様子も本物そっくりだった。

 ただ、波が強かったことが影響し、パワーが波に負けてしまい、自由に泳ぎ回る姿が見られなかったのは残念だった。だが手足はきちんと駆動しており、これからの“成長”が楽しみなウミガメの登場となった。

 表彰式で入賞者らは喜びを語る一方、「本来の力が発揮できなかった。戻ってきて優勝したい」と雪辱を誓ったほか、「海での操作は初めてだった。いい経験になった」と手応えを感じていた。

 審査委員の山本郁夫長崎大学大学院教授は講評で「うまくいったところは磨きをかけて、うまくいかなかったところは要因分析をして対策してほしい。海は水槽と違って難しい。それを乗り越えて、海のもの(機器)はできている。若い世代の参加は喜ばしい。未来の技術者に向けてがんばってほしい」とエールを送った。山本教授は三菱重工業や海洋研究開発機構(JAMSTEC)で無人探査機の開発実績もある。苦戦したチームが多かったが、と尋ねると「まず経験しないと新しいアイデアは出てこない」と“海の先輩”はコメントした。

 また、大会実行委員長の岡田正之沖縄能開大教授は「大会は成功といえる結果だ。全体的レベルは上がっている。続けていくことで海洋ロボのレベルも上がっていく。次回以降は台湾や近隣の国々からも参加してもらいたい」と来年への意気込みを語った。

「第1回沖縄海洋ロボットコンテスト」入賞者
【ROV部門】
・最優秀賞 沖縄職業能力開発大学校「ちゃんぷる~号」
・優秀賞 長崎大学・日本文理大学「高機動ROV」
・敢闘賞 岩手大学「FAN」
・特別賞 大里中学校「LEQUION-AQUA」
【AUV部門】
・最優秀賞 沖縄職業能力開発大学校「やなわらばー号」
【フリースタイル部門】
・特別賞 JTC玉城「ウミガメロボ」

「沖縄海洋ロボコン」リポート〈後編〉AUV部門に見た自信

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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