WHOの「ガン関連」発表、歳暮商戦にも波紋…ハムなど苦戦 画像 WHOの「ガン関連」発表、歳暮商戦にも波紋…ハムなど苦戦

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 世界保健機関(WHO)がハム・ソーセージなどの食肉加工品とがんの関係性を発表したのを受け、歳暮シーズン本番を前に、百貨店などで贈答用ハムの売り上げが落ち込むなどの影響が出始めた。消費者が贈る相手を気遣うあまり、食肉加工品を敬遠する傾向にあるようだ。食肉団体は「日本人の摂取量では問題はない。過剰な反応だ」と冷静な対応を呼び掛けている。

 11月初旬。東武百貨店池袋店(東京都豊島区)で、歳暮向けの高級ハムのキャンセルが相次いだ。ハム・精肉商品は例年、歳暮用商品全体の売り上げの約2割を占め、一番人気だ。10月中旬からインターネット、下旬から催事場で歳暮用商品の販売を始めているが、ハム・ソーセージ商品のここ1カ月間の売り上げは、前年同期を大きく下回るという。

 池袋店の催事場を訪れた80代女性は「がんになる。それが頭に浮かんでしまい、自分で食べるのも、相手に贈るのも気が引ける」と本音を漏らした。同百貨店は「ハム・ソーセージの商品が伸び悩んでいる。WHOの発表の影響は大きい」(広報担当)とみる。

 松屋銀座は、今月6日から歳暮商品の販売を始めた。約10日間の販売期間で、ハムのギフト商品の売り上げが前年同期より2割ほど減った。「相手に贈る歳暮用商品は影響が大きい」(広報課)という。

 こうした影響は、精肉店やスーパーでも出ている。都内百貨店に店舗を出す銘柄牛などを扱う精肉店は、ハムを中心に食肉加工品の売り上げが約2割落ちた。「WHOの発表後、牛肉全体の消費が鈍い」と話す関係者もいる。

 食肉メーカーの丸大食品は発表直後、一部のスーパーで、ウインナーの販売額が2割ほど落ち込んだと発表した。現在は回復傾向にあるという。

 内閣府食品安全委員会はWHOの発表の翌日、公式フェイスブックで、「『食肉や加工肉はリスクが高い』と捉えることは適切ではない」と発表している。全国の精肉店約5000店が所属する、全国食肉事業協同組合連合会(全肉連)の木村元治専務は「消費者の過剰な反応だ。特に高級志向の消費者がWHOの報道に敏感なようだ」と指摘する。

・がんと関連ほぼ無し

 国立がん研究センターは、日本人が食べる平均的な量であれば、大腸がん発生リスクは「無いか、あっても小さい」と説明する。2013年の国民健康・栄養調査によると、日本人の精肉・加工肉の摂取量は1日当たり63グラム(精肉50グラム、加工肉13グラム)にとどまる。世界的に見ても摂取量の低い国だという。

 WHOの専門機関は、全世界の人を対象にした疫学研究や動物実験などから、加工肉は「人に対して発がん性がある」、精肉は「おそらく人に対して発がん性がある」と判定した。世界がん研究基金と米国がん研究協会では精肉と加工肉の摂取が大腸がんのリスクを高めるとの評価報告書を07年に出し、「精肉は調理後の重量で週500グラム以内、加工肉はできるだけ控えるように」と勧告した。

 同センターが11年に公表した報告によると、加工肉を多量摂取しても大腸がんの発生リスクとの関連性は男女とも見当たらなかった。精肉も男性は多量摂取しても関連が無い。女性は毎日80グラム以上の精肉を食べるグループで結腸がん発生リスクが高まったが、それ以下の摂取量ならば関連は無いと報告している。

 同センターによると、がんの予防は塩蔵品の摂取を控える野菜・果実不足にならない熱い飲食物を取らない適度に運動する――など、生活習慣病を総合的に予防する取り組みが欠かせないという。(菅野有花、鈴木薫子)

歳暮用で消費者敬遠 業界「冷静な対応を」 食肉加工品でWHO発表が波紋

《日本農業新聞「e農net」》

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