グーグル、アマゾン、フェイスブック…AI開発加速へ、アップルは? 画像 グーグル、アマゾン、フェイスブック…AI開発加速へ、アップルは?

IT業務効率

 グーグル、アマゾン、フェイスブックといったIT大手が、それぞれの持つ機械学習システムや深層学習システムの提供に相次いで乗り出した。自社以外の研究者やエンジニア、それに趣味などの幅広い分野でこれらの人工知能(AI)ツールを活用し、ソフトの機能改善をフィードバックしてもらうとともに、新しい用途の開拓や、優秀な人材を取り込む狙いもある。

 かたやマイクロソフトや中国のバイドゥもAIの研究開発に力を入れており、アップルもその例外ではない。AIベンチャーの買収や専門人材の採用を拡大中だ。ただ、アップルの場合、同社ならではの極端な秘密主義がAI研究を困難にするのでは、という厳しい見方も出ている。

 グーグルが11月9日にオープンソースでの提供を発表したのは「テンソルフロー(TensorFlow)」。グーグルは写真サービスの「グーグルフォト」はじめ、グーグル翻訳、音声認識、グーグルメールでの自動返信機能、検索などに機械学習のアルゴリズムを採用し、ウェブやモバイルで提供するサービスがどんどん賢くなっている。その最新機械学習エンジンを無償提供する。

 テンソルフローは、第一世代の機械学習に比べると、ニューラルネットの構築に必要な期間は5分の1で済み、それだけ迅速にアプリケーションの機能を改善できるという。スマートフォン1台から、数千台のコンピューターが稼働するデーターセンターにまで対応する拡張性の高さも特色。ただ、スンダー・ピチャイCEOは公式ブログで「機械学習はまだ初期段階にある。現在のコンピューターは、4歳児が難なくできることでもできない」と述べ、オープンソース化で機械学習システムの開発を加速させたい考えを示した。

 とはいっても、使用するハードウエアや専門人材、パラメーターの調整手法などグーグルの機械学習のすべてを開示するのではなく、アルゴリズムの一部を無償でシェアするだけ。それでも、深層学習を手がけるスタートアップの米スカイマインドのクリス・ニコルソンCEOは「非常に興味深い。グーグルは他社より5-7年先行していて、そのツールをオープンソースにすれば、ほかのだれもが機械学習でうまくやれるようになる」とワイアード誌に期待を語っている。

 これに先立って、アマゾンも6月に機械学習の「アマゾン・マシンラーニング(Amazon Machine Learning)」のサービス提供を始めた。大量のデータからパターンを見出し、不正検出や需要予測、予測的なカスタマーサポート、クリック予測などを実行できるアプリケーションを簡単かつ短期間に構築できるとしている。

 さらに、フェイスブックは1月に深層学習システム「トーチ(Torch)」をオープンソースにすると発表した。もともとはスイスの研究者によって開発されたシステム。フェイスブックのブログによれば、大学の研究室はじめ、ツイッター、エヌビディア、AMD、インテルほか、グーグルが買収したAIベンチャーの英ディープマインド・テクノロジーズまで同システムを利用しているという。


アップルとグーグルのアプローチは対照的
 一方、アップルはAIや機械学習専門家の大量採用に乗り出したほか、今年10月には、AIを使った音声認識技術を持つ英ボーカルIQ(VocalIQ)、深層学習の画像認識技術を持つ米パーセプティオ(Perceptio)と、立て続けにAIベンチャーを買収。ロイターはアップルの元従業員の話として、機械学習の専門家の数がここ数年で3倍から4倍に増えていると報じた。

 アップルが人工知能に肩入れするのは、2010年に買収したパーソナルアシスタント「Siri(シリ)」や、グーグルナウのようにユーザーが必要とする情報を先回りして知らせるインテリジェント・リマインダーの機能強化が主な狙いと見られる。さらに、開発中とささやかれる電気自動車の自動運転機能にもAI技術を盛り込むものと思われる。

 ただ、グーグルなどとアップルのアプローチは根本的に異なる。グーグルはユーザーが打ち込んだ大量の情報を収集し、ビッグデータ解析を行うのに対して、アップルはユーザーのプライバシーを尊重し、あくまで匿名情報として利用。アップルIDと収集データをひも付けしない方針だ。

 一般的には、両者をリンクさせ、習慣などの個人情報が多ければ多いほど、特定のユーザーが何を欲しているのか予測しやすくなる。そうしたことから、ロイターは専門家の話として、プライバシーの尊重が、機械学習でスマートフォンをより賢くしていく上での障害になるのではないかという見方を紹介している。
[http://www.reuters.com/article/2015/09/07/us-apple-machinelearning-idUSKCN0R71H020150907#fdbshMIA3Yty3Mwk.97{http://www.reuters.com/article/2015/09/07/us-apple-machinelearning-idUSKCN0R71H020150907#fdbshMIA3Yty3Mwk.97}]

 加えて、ブルームバーグの報道によれば、アップルの極端な秘密主義がAI研究の邪魔になるとみている専門家も多い。グーグルやマイクロソフト、フェイスブック、IBM、バイドゥなどの研究者は、学会や国際会議で普通に論文発表するのとは対照的に、アップルの研究者は論文を出さない上、国際会議に来ないか、来たとしても社外の研究者とあまり交流しないためだ。

 「アップルがその態度を変えない限り、(AIで)他社に後れをとったままになる。本当に優秀な人材は、すべてが秘密というクローズドな環境には行きたがらない」。AIのパイオニアでもあるトロント大学のユシュア・ベンジオ教授は、ブルームバーグの取材に対し、こうコメントしている。

 アップルと同様に秘密主義で知られるアマゾンも、こうした状況に対応するためか少しずつやり方を変えてきているようだ。9月には、同社の研究者の一人が、画像と音声認識のAIシステムのより効率的な構築方法を提案する論文を発表した。複数のAI研究者によれば、アップルが同社初のAI関連の論文発表を近く予定しているとの噂があるという。唯我独尊のアップルもオープンな方向にポリシーを変える日が来るのかどうか。Siriに聞いてみよう。
[http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-10-29/apple-s-secrecy-hurts-its-ai-software-development{http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-10-29/apple-s-secrecy-hurts-its-ai-software-development}]

グーグル、アマゾン、フェイスブック…AI開発加速へ。ソフトウエアツール相次ぎ提供

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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