京都の伝統と革新を“和える”若き女性起業家の思い 画像 京都の伝統と革新を“和える”若き女性起業家の思い

マネジメント

「aeru gojo」が誕生した意義
 伝統の街・京都で伝統産業に新しい風を吹き込もうと若き女性起業家が動きだした。
「和える」代表の矢島里佳(27)。「0から6歳の伝統ブランドaeru」を立ち上げ、数多くのメディアにも取り上げられる彼女が、7日に京都・五条に2つの目の直営店「aeru gojo」をオープンさせた。なぜ京都なのか?そこには今の資本主義経済から脱皮を目指す矢島と京都の共通した思いがある。

 2011年に「和える」を起業した矢島。会社を立ち上げた時から、東京と京都という二つの街に日本の伝統を発信する場所を作りたいと思っていた。昨年7月に東京・目黒に直営1号店を構え、それからわずか1年ちょっとで京都進出を果たす。

 オープン前日。「aeru gojo」で矢島と京都市長の門川大作、京都信用金庫専務理事の榊田隆之が膝詰めで語り合った。テーマは「京都とaeru gojoがめざす未来」。

 門川は「京都市の生き方と『和える』の基本コンセプトが合致している。それは過度な競争主義とは別の価値観だ」という。15年前、京都市は基本構想を策定した。普通、自治体であれば産業政策やインフラ整備などを掲げる。

 しかし京都市は「生き方」を真っ先に定義した。生き方とは昔から市民が得意としてきたもの。「目利き」「極める」「おもてなし」「もったいない」などの精神だ。榊田は「一見さんお断りなどの嫌らしい文化もひょっとしたら守る必要があるかもしれない」と話す。

新しい油を注ぐから明かりが灯り続ける
 東京出身の矢島が京都に通い始めて2年になる。「最初は伝統の街という単純なイメージだったが、実は古くて新しいが続いている革新の街だということを肌で感じた」。門川は伝統と革新について、比叡山延暦寺の「不滅の法灯」を例に出す。

 「新しい油を注ぐことで伝統が続く。矢島さんが新しい油を注ぎにやってきた。もともと京都はよそから入ってきた人が街を発展させていった。和えるもいずれ老舗になっていくだろう」(門川)。榊田も「矢島さんのような人を京都が応援していかないと、この国のモノづくりはおかしくなる」と続けた。

 矢島は日本が「失われた20年」の時代に子どもから大人になった世代。「私たちは先人たちが築いてくれた豊かな国に生まれた。経済は大事なんです。もし食うや食わずの暮らしなら、食器は何でもいいとなる。経済が発展しているからこそ、私は文化を考えることができた」という。

 矢島が最近よく使う言葉が「文化経済大国」。文化は贅沢ではなく日常にあるもので、文化があるからこそ経済ができている、という考えだ。彼女が自身に課すミッションは文化資本と経済資本を“和える”こと。

 門川は「モノづくりを和えるから、文化を和える存在になってほしい」と期待を込める。今、京都はインバウンド効果で外国人観光客であふれかえっている。しかし「コンビニで唐揚げを買って舞妓さんを待っていたりする。外国の人たちと街が交わっていない」(門川)のだ。

伝統産業の衰退のスピードに追いついていない
 他の産業、異分野の人たちと和えられていないのは、京都に数多くいる伝統産業の手職人も同じ。矢島は全国を回りながら「伝統産業の衰退のスピードに自分がやろうとしていることが追いついていない」と危機感を募らす。

 矢島が「aeru gojo」を構えた松原通りは、かつて呉服商などが集積し賑わっていた。しかし時代とともに町屋がビルに建て替えられ、風景は様変わりしつつある。「aeru gojo」が入居した町屋のオーナーは糸の卸や小売りを手がける「糸六」。年々、事業が縮小傾向にある中で、代表取締役の今井登美子は店舗の一部を貸す出すことを考えていた。ただ飲食業などには店子になってほしくなかった。縁あって矢島を紹介され、すぐに承諾する。

 町屋は前が「aeru gojo」、奥に入ると糸六がそのまま商売をしているという佇まい。これを機にコラボ商品も販売し、まさに“和える”を体現している。今井は「私たち自身も新しいことにチャレンジする気持ちになれる」とワクワク感が止まらない。

 京都は第2,第3の矢島のような存在を吸引しなければいけない。そして矢島は伝統産業の衰退を少しでも食い止めるべく、次のアイデア実現に進み始めている。
(敬称略)
《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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